築40年マンションの3回目の大規模修繕|工事内容と費用、建て替えの判断
築40年前後のマンションで迎える「3回目の大規模修繕」は、1回目・2回目と同じ感覚で進めると行き詰まります。外壁・防水・シーリングが3巡目に入るのと同じ時期に、給排水管など設備の更新期が重なるからです。八王子を拠点にマンション・アパート・ビルの外装修繕を元請けとして手がける巧正株式会社が、3回目で何が変わるのか、工事項目と費用の目安、修繕積立金が足りないときの順番、そして「存続か建て替えか」を考えるときの材料を、国土交通省の資料と当社の現場の見方で整理しました。
結論:3回目は「外装の3巡目」に給排水管など設備の更新期が重なる。順番は 雨水・落下の対策 → 外装の残り → 設備
3回目の大規模修繕は、前回から12〜15年、築36〜45年のあいだに迎えるのが一般的です。外壁タイル・シーリング・屋上防水は3巡目に入り、1回目・2回目を「かぶせ」で済ませてきた屋上防水は撤去して新設する判断(参考値24〜30年)、鉄骨階段や玄関扉・サッシは取り替え(参考値34〜38年)が視野に入ります。同じ時期に給排水管の取り替え(参考値30〜40年)が重なります。国土交通省の実態調査では3回目以上の工事は平均106.1万円/戸(最頻75〜100万円)ですが、この金額に設備をどこまで含むかは物件ごとに違うため、外装と設備は分けて足す必要があります。
修繕積立金が足りない場合は、雨水と落下の対策(タイル・シーリング・防水)を先に、外装の残りと設備は時期を分けるのが基本の順番です。2026年4月施行の改正区分所有法で建て替え決議の要件は一部緩和されましたが、マンションの再生(建替え等)の実績は全国で累計472件(令和6年時点・件は棟単位)にとどまり、築40年以上の約137万戸(住戸単位)の大多数は修繕して住み続けています。
築40年のマンションはいま、どんな状況にあるか
国土交通省の資料(令和7年10月)によると、築40年以上のマンションは全国で約137万戸、ストック全体の約2割にあたり、今後10年で2倍、20年で3.4倍に増える見込みです。
ひとつ確認しておきたいのが耐震基準です。2026年に築40年を迎える建物は1986年前後の竣工で、1981年6月1日以降に建築確認を受けた「新耐震基準」の建物がほとんどです。竣工が1982年以前(築44年前後)になると、建築確認が1981年5月以前の旧耐震基準の可能性が出てきます。旧耐震かどうかは修繕の内容と建て替え判断の両方に関わるので、建築確認済証の日付(管理会社が保管していることが多い)で先に確かめておいてください。

1回目・2回目と3回目の違い|外装の3巡目に設備の更新期が重なる
1回目(築12〜15年)は外壁の塗り替えとシーリング、屋上防水の補修が中心で、2回目(築24〜30年)はそれに下地補修の増加と屋上防水の全面改修が加わります。築30年の2回目の大規模修繕で整理したとおりです。3回目で変わるのは、次の3点です。
- 外装の「補修」が「取り替え」に変わる部位が出る……1回目・2回目をかぶせ工法で済ませてきた屋上防水は、層を撤去して新設する判断(参考値24〜30年)が出てきます。鉄骨階段、玄関扉・サッシ・面格子などの建具は、取り替えの参考値が34〜38年で、3回目の時期に重なります。
- 下地補修の数量が増える……タイルの浮きやコンクリートの爆裂は、当社の現場では築年数が進むほど打診で見つかる数量が増える傾向があります。足場を組んで打診してから数量が確定するため、3回目は予備費の考え方がより重要になります。
- 設備の更新期が同じ時期に来る……給水管・排水管の取り替え(参考値30〜40年)が外装の3巡目と重なり、エレベーターの取り替え(26〜30年)や機械式駐車場の取り替え(18〜22年)はその前後にあります。設備工事は当社の施工範囲ではありませんが、資金計画では同じ表に並べる必要があります。

3回目で検討する工事項目と周期の参考値
国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」(令和6年6月改定)の様式第3-2号に示された修繕周期の参考値をもとに、築36〜45年で検討時期に入る工事項目を外装と設備に分けて並べました。参考値は固定の年数ではなく、実際の時期は劣化診断で決めます。
| 区分 | 工事項目 | 周期の参考値 | 3回目で起きやすいこと |
|---|---|---|---|
| 外装 | 外壁タイルの補修(打診→浮き・剥落の補修) | 12〜15年 | 浮きの数量が増える。全面打診の結果で数量が確定 |
| 外装 | 躯体コンクリートの補修(ひび割れ・爆裂) | 12〜15年 | 鉄筋の錆による爆裂が増える。中性化の進行を確認 |
| 外装 | シーリングの打ち替え | 12〜15年 | 3巡目。サッシまわりの下地の傷みを同時に確認 |
| 外装 | 屋上防水 | 補修 12〜15年/撤去・新設 24〜30年 | かぶせを重ねてきた建物では、層を撤去して新設する判断 |
| 外装 | 外壁塗装 | 塗り替え 12〜15年/既存塗膜を除去して塗装 24〜30年 | 塗膜の層が厚く、剥がれの原因になっていれば除去を検討 |
| 外装 | 屋外鉄骨階段 | 補修 12〜15年/取り替え 34〜38年 | 踏面の防水と桁の錆の程度で、補修か取り替えかを分ける |
| 外装 | 建具(玄関扉・サッシ・面格子) | 点検・調整 12〜15年/取り替え 34〜38年 | サッシは外側からの作業が要る場合に足場と同時が有利。玄関扉は足場不要 |
| 設備 | 給水管・排水管 | 更生 19〜23年/取り替え 30〜40年 | 設備業者の調査(配管の内視鏡調査など)で判断 |
| 設備 | エレベーター | 補修 12〜15年/取り替え 26〜30年 | 設備業者の点検結果で判断 |
| 設備 | 機械式駐車場 | 補修 5年/取り替え 18〜22年 | 設備業者の点検結果で判断 |
工事項目ごとの周期と足場の要否は、記事末の「マンション・ビルの修繕周期 早見表」にまとめています。

3回目の費用の目安|国土交通省の調査と、設備を分けて足す理由
国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(集計818件)では、戸あたりの工事金額は、1回目が平均151.6万円(最頻値100〜125万円)、2回目が平均112.4万円(最頻値75〜100万円)、3回目以上が平均106.1万円(最頻値75〜100万円)です。回数が進むほど戸あたりの平均は下がっていますが、調査はその理由までは示していません。
ただし、この調査の金額は回答した大規模修繕工事の総額で、給排水管の取り替えやエレベーターの更新をどこまで含むかは物件ごとに違います。設備の更新は足場が要らないため、外装の工事(足場を組む工事)とは別の年・別の業者になることもあります。資金計画では、外装の3巡目と設備の更新を同じ表に並べて、分けて足したうえで合計を見てください。
| 回数 | 戸あたり工事金額 平均 | 最頻値の帯 | 時期の目安 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 151.6万円 | 100〜125万円 | 築12〜15年 |
| 2回目 | 112.4万円 | 75〜100万円 | 築24〜30年 |
| 3回目以上 | 106.1万円 | 75〜100万円 | 築36〜45年 |
八王子・多摩での外装工事の総額の目安と、当社が元請けとして施工した事例は「八王子市の大規模修繕(費用の目安・事例・流れ)」にまとめています。当社は㎡単価を公開していませんが、現地調査のうえで工事総額の見積は無料でお出しします。
修繕積立金が足りないときの順番|雨水と落下の対策を先に
3回目は、外装と設備の更新期が重なるため、修繕積立金の残高と工事費の差が出やすい時期です。すべてを一度にできないときは、工事を「今回」「次回」「点検を続ける」に分けます。当社が診断でお伝えしている優先順位は次のとおりです。
- 落下と雨水の対策……外壁タイルの浮き・爆裂の補修、シーリングの打ち替え、屋上・バルコニーの防水。第三者への危害と漏水を防ぐ工事を最初に置きます。
- 足場を組んだ年にまとめる外装の残り……外壁塗装、高所の鉄部、笠木・庇の防水、鉄骨階段やサッシの取り替え。足場が立っている間に終わらせないと、次に足場を組むときに仮設費を二重に払います。
- 足場と切り離せる設備・建具……給排水管、エレベーター、機械式駐車場、玄関扉の取り替えは足場が要らないため、資金の見通しに合わせて年をずらせます。
資金の手当てとしては、東京都の「マンション改良工事助成」(大規模修繕の借入に対する利子補給)と住宅金融支援機構の融資があり、「マンション改良工事助成とは」で申込みの順番を説明しています。積立金が足りないときの選択肢(一時金・借入・工事の分割・積立金の見直し)は「修繕積立金が足りないときの5つの選択肢」をご覧ください。


存続か建て替えか|3回目で一度は向き合う判断
3回目の大規模修繕は「このまま修繕して住み続けるか、建て替えるか」を管理組合として一度は話し合う時期です。数字で見ると、マンションの再生(建替え等)の実績は全国で累計472件(令和6年時点、国土交通省資料。件は棟単位)に対して、築40年以上のストックは約137万戸(住戸単位)です。大多数のマンションは修繕して住み続けるのが現実で、3回目の修繕計画は「次の30年」を前提に組むのが基本になります。
一方で、2026年4月1日に施行された改正区分所有法(令和7年法律第47号)で、建て替え決議の要件が一部変わりました。原則は区分所有者と議決権の各5分の4以上のままですが、耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の剥落のおそれ、給排水管等の腐食による衛生上の支障、バリアフリー基準への不適合といった客観的な事由がある場合は各4分の3に引き下げられます。また、修繕などの共用部分の変更は集会の出席者の多数決で決められるようになり、所在の分からない区分所有者を決議の母数から外す手続きも設けられました。
当社は外装の施工会社であり、建て替えの是非を判断する立場ではありません。ここで書けるのは、判断の材料になる建物の現状(躯体の傷み、タイルの浮きの数量、防水層の状態)を診断で数字と写真にすることまでです。決議の要件や進め方は、管理会社、マンション管理士、弁護士など専門家にご確認ください。

【施工会社の視点】築40年前後の外装で、当社が実際に見ているもの
- タイルの浮きが「面」で出る……築20年台では点在していた浮きが、下地モルタルの劣化で面単位に広がることがあります。部分張り替えで済むか、面で張り替えるかを、打診の結果(数量と位置)で判断します。ロープアクセスで先に全面打診を行い、数量を把握してから見積を組む方法もあります(記事末「ロープアクセス打診調査」)。
- コンクリートの爆裂と鉄筋の露出……ひび割れから入った水で鉄筋が錆び、コンクリートを押し出す爆裂が増えます。錆を落として防錆処理をし、断面を修復する工事で、数量は足場を組んでから確定します。
- 屋上防水の層が厚くなっている……1回目・2回目でかぶせ工法を重ねていると、防水層が何層にもなり、膨れや剥がれの原因になります。撤去して下地からやり直すか、もう一度かぶせられるかは、下地の含水状態と立上りの納まりで判断します。
- サッシまわりの下地が傷んでいる……シーリングを打ち替えるとき、サッシまわりのモルタルが割れていたり、サッシ自体の腐食が見つかることがあります。建具の取り替えを同時に検討する材料になります。
- 鉄骨階段は「補修か取り替えか」の分かれ目……踏面の防水と桁の錆の程度で判断します。取り替えは足場と同時に行うと仮設費を分けずに済みます。


3回目の大規模修繕の進め方|診断から工事まで
- 劣化診断(外装)と設備の調査を分けて依頼する……外装は打診・目視・写真で、設備は配管の内視鏡調査など専門業者で。結果を1枚の表にまとめます。
- 長期修繕計画を「次の30年」で作り直す……ガイドラインは計画期間を30年以上、かつ大規模修繕を2回含む期間としています。3回目の前に見直すと、4回目までの資金が見えます(長期修繕計画の作成費用と見直し)。
- 工事を「今回・次回・点検継続」に分ける……上の優先順位で仕分け、今回の工事範囲を決めてから見積を取ります。
- 相見積もりで工程表と数量の根拠を比べる……3回目は下地補修の数量が金額を左右するため、見積の数量がどの調査にもとづくかを確認します。
- 総会決議・工事説明会・着工……当社は説明会・理事会・総会への出席、入居者への告知(2週間前の書面と前日の再案内)、掲示・問い合わせ窓口を引き受けます。工期の目安は記事末の「大規模修繕の工期の目安」をご覧ください。
管理組合としての全体の流れは記事末の「管理組合向け大規模修繕の進め方 10ステップ」にまとめています。賃貸一棟のオーナー様は総会決議がない分、判断は早く進みますが、外装と設備の更新期が重なる資金の問題は同じです。


当社では、建物診断の結果をもとに、今回やる工事と次回に回す工事を分けた見積と工程表をセットでお出ししています。診断・現地調査・お見積りは無料で、契約の義務はありません。相見積もりの一社としてのご依頼も歓迎します。
- 施工体制:特別教育を修了した協力職人と組み、当社が元請けとして工程・安全・品質を監理する体制
- 保証:屋上防水 平場10年・立上り5年/外壁塗膜 最長10年。引き渡し後1・3・5・10年の定期点検は無料
- 東京都知事許可(般-7)第161006号/創業2014年4月・2023年法人化/累計1,000件超
築40年前後の建物の診断・3回目の修繕計画のご相談は無料です。無料で相談する/お電話 042-508-3134(9:00〜18:00/日曜定休)
よくあるご質問
Q1. 3回目の大規模修繕はいつ頃になりますか
A. 国土交通省のガイドラインの参考値(12〜15年周期)を3回分重ねると築36〜45年が目安です。実際の時期は前回の工事からの経過年数と劣化診断の結果で決めます。周期を過ぎていても劣化サインが出ていなければ、点検を続けながら時期を延ばす判断もできます。
Q2. 3回目の費用は2回目より高くなりますか
A. 国土交通省の実態調査では、戸あたりの工事金額の平均は2回目112.4万円、3回目以上106.1万円で、大きくは変わりません。ただし、この金額に設備の更新をどこまで含むかは物件ごとに違います。3回目は給排水管の取り替えなど設備の更新期が同じ時期に来るため、外装と設備を分けて足し、合計で見てください。
Q3. 給排水管の取り替えも大規模修繕と一緒にやるべきですか
A. 給排水管の工事は足場が要らず、専有部分に入る工事のため、外装工事とは別の業者・別の時期になることが多いです。同じ年にすると住民の負担と資金が集中するので、資金計画の中で年をずらすのが一般的です。当社は外装の施工会社で、設備工事は専門業者にご相談ください。
Q4. うちのマンションが旧耐震かどうかはどう調べますか
A. 建築確認の日付が1981年6月1日以降なら新耐震基準です。竣工日ではなく建築確認の日付で判断します。建築確認済証や検査済証は管理会社が保管していることが多く、なければ市の建築指導課で台帳記載事項証明を取る方法があります。耐震診断の要否は専門家にご相談ください。
Q5. 建て替えの決議は何割の賛成が要りますか
A. 2026年4月1日施行の改正区分所有法では、建て替え決議は原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上のままで、耐震性の不足や外壁の剥落のおそれなど客観的な事由がある場合に各4分の3に引き下げられます。要件の当てはめは個別の判断になるため、管理会社・マンション管理士・弁護士にご確認ください。
Q6. 修繕積立金が足りません。3回目はどこから手を付ければよいですか
A. 落下と雨水の対策(タイルの浮き・シーリング・防水)を先に、足場を組んだ年にまとめる外装の残りを次に、足場の要らない設備・建具は年をずらす、という順番が基本です。東京都の利子補給(マンション改良工事助成)や住宅金融支援機構の融資も選択肢になります。当社の診断では「今回やる」「次回に回す」を分けた見積をお出しします。
まとめ
- 3回目は外装の3巡目に設備の更新期が重なる……築36〜45年。屋上防水の撤去新設、鉄骨階段・建具の取り替えが視野に入る
- 費用……国交省調査で3回目以上は平均106.1万円/戸(最頻75〜100万円)。設備をどこまで含むかは物件ごとに違うため、外装と設備を分けて足す
- 順番……落下・雨水の対策 → 足場を組む年にまとめる外装 → 足場の要らない設備・建具
- 存続か建て替えか……再生の実績は累計472件、築40年以上は約137万戸。大多数は修繕して住み続ける。改正区分所有法の要件は専門家に確認
- 進め方……外装と設備の診断を分けて依頼 → 長期修繕計画を次の30年で作り直す → 工事を仕分けて見積
- 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省・PDF)
- 令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理(国土交通省住宅局・令和7年10月・PDF)
- 老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について(法務省)
- 国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」(令和6年6月改定)様式第3-2号
執筆・監修:巧正株式会社 施工管理部(外壁診断士・2級建築施工管理技士補(仕上げ)在籍)|累計1,000件超の施工実績。周期・費用の数値は国土交通省の公表資料によるもので、実際の時期と金額は建物の状態・仕様で変わります。法律の記述は公表資料にもとづく概要で、個別の判断は専門家にご確認ください。2026年9月28日時点の公表資料にもとづいています。
築40年前後の建物の診断をお受けしています
外装の劣化診断(打診・目視・写真)の結果を、今回やる工事と次回に回す工事に分けてご報告します。現地調査・お見積りは無料で、契約の義務はありません。
無料で相談する/お電話 042-508-3134(9:00〜18:00/日曜定休)
巧正株式会社/東京都知事許可(般-7)第161006号/〒192-0045 東京都八王子市大和田町6-19-8 ウィングマンション205号
