マンション大規模修繕の総会・合意形成|管理組合の決議要件と相見積もり比較の進め方【2026年】
結論:大規模修繕は「総会の決議」と「合意形成」で決まる
- 決議のハードル:大規模修繕は原則、総会の特別決議(区分所有者・議決権の各3/4以上)が必要な場合が多い(工事内容により普通決議=過半数で足りる場合もある)
- 成否を分けるのは合意形成:事前説明会・議事録共有・段階的な報告で、住民の理解と賛成を積み上げる
- 費用の納得感:相見積もり(3社程度)を「数量・仕様・単価」で比較し、根拠を住民に示す
- 進め方:理事会→修繕委員会→説明会→総会決議→発注、の順で段階を踏む
八王子・首都圏で管理組合の大規模修繕を支援してきた巧正が、総会・合意形成の進め方を実務目線で解説します。
マンションの大規模修繕は、工事の品質だけでなく「総会でどう決議するか」「住民の合意をどう形成するか」が成否を大きく左右します。多額の修繕積立金を使い、居住者の生活にも影響するため、決議のハードルや進め方を理事会・修繕委員会が正しく理解しておくことが欠かせません。この記事では、総会の決議要件・必要な同意割合・合意形成のコツ・相見積もりの比較観点を、管理組合の意思決定の流れに沿って整理します。

大規模修繕の意思決定の流れ
大規模修繕は、いきなり総会で決めるのではなく、段階を踏んで合意を積み上げます。一般的な流れは次のとおりです。
- 理事会での問題提起:長期修繕計画・劣化状況をもとに検討開始
- 修繕委員会の設置:専門的な検討を行う実行チームを組成(修繕委員会の作り方)
- 建物診断・見積取得:現地調査と相見積もりで費用・仕様を把握
- 住民説明会:内容・費用・スケジュールを説明し質問に回答
- 総会での決議:工事内容・予算・発注先を議案として決議
- 契約・着工:決議に基づき発注、工事開始
全体像は八王子の管理組合向け大規模修繕の進め方|全10ステップでも詳しく解説しています。
【2026年4月施行】改正区分所有法で、決議の要件が変わりました
大規模修繕の決議を調べるうえで、まず押さえておきたいことがあります。区分所有法は2025年5月30日に改正法が公布され、2026年4月1日から施行されています。ネット上の解説記事には改正前の要件のまま書かれているものが多いので、注意してください。

管理組合にとっていちばん大きいのは普通決議の母数です。改正前は「区分所有者全員および議決権の各過半数」でした。つまり欠席は事実上の反対と同じ重さになっていました。
改正後は「集会に出席した区分所有者およびその議決権の各過半数」になりました(改正後区分所有法第39条第1項)。出席した人の中で決められる形です。大規模修繕の多くは普通決議なので、合意形成のハードルは実質的に下がっています。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年4月1日〜) |
|---|---|---|
| 普通決議の母数 | 区分所有者全員および議決権の各過半数 | 集会に出席した区分所有者およびその議決権の各過半数 |
| 欠席の扱い | 反対と同じ重さになる | 母数に入らない |
| 所在不明の所有者 | 母数に含まれたまま | 裁判所の認定で母数から除外できる(第38条の2) |
| 建替え決議 | 区分所有者および議決権の各5分の4以上 | 原則は同じ。一定の事由に該当する場合は4分の3以上 |
※本記事は制度の概要を整理したものです。個別の決議が有効に成立するかどうかの判断は、弁護士やマンション管理士にご確認ください。
総会の決議:普通決議と特別決議の違い
マンションの意思決定は総会が最高の議決機関です。決議には「普通決議」と「特別決議」があり、大規模修繕の内容によって必要なハードルが変わります。
| 種類 | 必要な賛成 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 普通決議 | 区分所有者・議決権の各過半数(規約により変動) | 通常の管理・比較的軽微な修繕 |
| 特別決議 | 区分所有者・議決権の各3/4以上 | 共用部分の重大な変更を伴う工事・規約変更 等 |
外壁塗装・防水など「原状回復(大規模修繕)」の範囲であれば普通決議で足りるケースもありますが、共用部分の形状・用途を大きく変える工事を含む場合は特別決議が必要になります。議案作成の段階で、どちらの決議要件に当たるかを整理しておくことが重要です。
その工事は17条か、18条か|ここで決議の重さが変わります
大規模修繕が普通決議で足りるのか、特別決議が要るのか。分かれ目は「共用部分の形状または効用の著しい変更を伴うかどうか」の一点です。

著しい変更を伴わないなら第18条の「管理」にあたり、普通決議で実施できます。伴う場合は第17条の「変更」となり、区分所有者および議決権の各4分の3以上という特別決議が必要になります。
外壁の補修、防水、鉄部の塗装といった一般的な大規模修繕は、原則として普通決議の側です。「大規模」という言葉の印象から特別決議が要ると思われがちですが、そうではありません。

| 決議 | 工事の例 | 要件 |
|---|---|---|
| 普通決議 | 鉄部の塗装/外壁の補修/防水工事/給水管の更生・更新/照明設備の更新/バリアフリー化(スロープ併設など)/防犯設備の設置(既存配管を使う場合) | 出席区分所有者およびその議決権の各過半数 |
| 特別決議 | 階段室部分の改造/外壁への新規エレベーター設置/居室の増築(バルコニーの屋内化を含む)/階段室単位での増築工事 | 区分所有者および議決権の各4分の3以上 |
ただし国土交通省の資料自体が、実際の工事における変更の箇所・範囲・態様・程度を総合的に勘案して個別に判断する必要があるとしています。判断に迷う工事がある場合は、総会にかける前に専門家に確認しておいてください。
決議は3段階ある|普通決議・特別決議・建替え決議
管理組合の決議は、重さによって3つに分かれます。大規模修繕の議案を作るときは、自分たちの工事がどこにあたるかを最初に確定させてください。

建替え決議については、改正で一定の事由に該当する場合に4分の3以上へ緩和される規定が設けられました。老朽化が進んだマンションの建替えを進めやすくするための改正です。
所在が分からない所有者を、決議の母数から外せるようになりました
築年数が経ったマンションほど、相続が済んでいない住戸や、長期不在で連絡がつかない住戸を抱えています。改正前はこうした住戸も母数に含まれるため、決議のハードルを押し上げていました。

改正でこの点に手当てが入り、裁判所が「所在等不明」と認定した区分所有者を、決議の母数から除外できる制度が新設されました(改正後区分所有法第38条の2)。10戸のうち3戸が不明なら、母数を7として計算できます。
ただし裁判所への請求が必要で、管理組合が自分の判断で除外できるものではありません。該当しそうな住戸がある場合は、早めに弁護士へ相談してください。手続きに時間がかかるため、総会の直前では間に合いません。
合意形成を進める5つのコツ
総会で否決されたり紛糾したりする多くの原因は、事前の合意形成不足です。次の5点を丁寧に行うことで、賛成を得やすくなります。
- 事前説明会を開く:総会の前に工事内容・費用・スケジュールを説明し、疑問をその場で解消する
- 議事録・資料を共有する:検討経緯を見える化し、「なぜこの工事・この費用なのか」を透明にする
- 段階的に報告する:前回総会からの進捗を都度報告し、唐突感をなくす
- 質問・反対意見に丁寧に対応する:反対の背景(費用負担・工事中の生活)に具体的に答える
- 相見積もりの根拠を示す:複数社比較で費用の妥当性を客観的に説明する
工事が始まってからの住民対応・トラブル防止は大規模修繕の工事中の住民対応・トラブル対策にまとめています。
委任状と議決権行使書は、意味が違います
出席者の過半数で決まる形になったぶん、誰を「出席」に数えるかが以前より重要になりました。ここは理事会が実務でいちばん迷うところです。

| 提出されたもの | 内容 | 出席の扱い |
|---|---|---|
| 本人が出席 | その場で賛否を表明する | 出席 |
| 議決権行使書 | 賛成・反対を書面で示す | 出席 |
| 委任状 | 議長や他の組合員に判断を委ねる | 出席 |
| 何も提出しない | 欠席 | 出席に数えない |
つまり「まず何かを出してもらうこと」自体が合意形成の一部です。賛否を決めきれない方には議決権行使書ではなく委任状を、という案内の仕方もあります。ただし具体的な扱いは管理規約の定めによるので、必ずお手元の規約を確認してください。
議案書に書くべき5つのこと
否決される議案には共通点があります。金額は書いてあるが、その根拠が書いていないことです。総会の場で「なぜこの金額なのか」を聞かれてから資料を探すことになると、その場では決まりません。

| 項目 | 書く内容 | これが無いと |
|---|---|---|
| 工事の範囲と数量 | どの部位を、どれだけ直すのか | 「一式」だけでは検討のしようがない |
| 金額とその内訳 | 部位別の数量と単価。予備費の考え方 | 総会で必ず質問が出て止まる |
| なぜ今なのか | 調査診断の結果と、先送りした場合の影響 | 「まだ大丈夫では」という意見に返せない |
| 業者選定の経緯 | 何社から集め、どの基準で選んだか | 選定の公平性を疑われる |
| 資金の裏づけ | 積立金の残高と、工事後にいくら残るか | 次の周期の不安が解消されない |
このうち2番目が最も重要です。部位別の数量と単価が入っていれば、他の4つの質問にもその場で答えられます。逆に見積書が「一式」表記だと、理事会自身が説明できない状態で総会に臨むことになります。見積書の読み方は長期修繕計画書の見方でも整理しています。
相見積もりの比較で見るべき観点
費用の納得感を得るには、3社程度の相見積もりを同じ条件で比較するのが基本です。金額の総額だけでなく、次の観点で中身を見比べます。
| 比較観点 | チェックするポイント |
|---|---|
| 数量・内訳 | 「一式」でなく数量・面積が明記され、各社で前提が揃っているか |
| 仕様・材料 | 塗料・防水のグレードや工法が同等条件か(安い=仕様を落としている場合あり) |
| 単価 | ㎡単価・項目単価が相場から極端に外れていないか |
| 工期・体制 | 工期・施工体制・現場管理者の有無 |
| 保証・アフター | 保証年数・保証範囲・定期点検の有無 |
| 実績・信頼性 | 同規模マンションの施工実績・元請けか下請け丸投げか |
他社の見積もりが妥当か不安な場合は、大規模修繕のセカンドオピニオン(他社見積の無料診断)もご活用ください。
【施工会社の視点】総会で必ず出る5つの質問
ここからは、実際に管理組合様の総会資料をお出ししている側から見た話です。当社が関わった総会でほぼ毎回出る質問は、次の5つに集約されます。

たとえば1番目の「なぜこの金額なのか」。当社が八王子市内のマンションでお出しした見積では、シーリング打替えが900円/m、合計282,280円という形で数量と単価を記載しています。この形なら「200mあるので18万円です」とその場で説明できます。
| 総会で出る質問 | 答えられる状態にするために必要なもの |
|---|---|
| なぜこの金額なのか | 部位別の数量と単価が入った見積書 |
| 他社と比べたのか | 全社に同じ仕様書を渡したという経緯の記録 |
| なぜ今やるのか | 調査診断の報告書と、劣化箇所の写真 |
| 積立金は足りるのか | 工事後の残高と、次の周期までの積立計画 |
| 工事中の生活はどうなるか | 足場の期間・洗濯物・在宅の要否・騒音の時間帯を書いた工程表 |
実際に当社がお受けした相見積もりでは、管理組合様が用意された仕様書に部位ごとの数量(206.0m、103.5m、36ヶ所)が明記されていました。ここまで書かれていると、各社の見積が同じ土俵に乗り、理事会は単価の違いだけを見れば済みます。
比較できない見積が何を招くかについては、マンション大規模修繕の談合の記事で構造から整理しています。
発注方式の選び方(責任施工方式 vs 設計監理方式)
大規模修繕の発注方式は主に「責任施工方式」と「設計監理方式」があり、管理組合の体制や規模で向き不向きがあります。詳細な比較は責任施工方式 vs 設計監理方式|10項目で徹底比較をご覧ください。
総会決議までの12か月|逆算するといつ始めるかが決まります
決議の要件が分かっても、当日までの段取りが間に合わなければ意味がありません。標準的には総会の12か月前から動き始める形になります。

| 時期 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| 12か月前 | 修繕委員会の立ち上げ | 理事会の任期をまたぐため、引き継ぎの方法を決めておく |
| 10か月前 | 建物の調査診断 | ここが議案書の「なぜ今なのか」の根拠になる |
| 6か月前 | 工事内容と概算の確定 | ここまでがいちばん時間がかかる |
| 3か月前 | 業者選定と見積比較 | 同じ仕様書で複数社から取る |
| 1か月前 | 議案書の配布 | 標準管理規約では総会の2週間前までが期限 |
招集手続に不備があると、決議そのものの有効性が争われることがあります。議案書の配布期限は管理規約で定められているので、必ず確認してください。
決議が取れなかったときの3つの選択肢
否決されることもあります。ただし否決は「終わり」ではなく、何が足りなかったかが分かった状態です。次の総会までにやることは3つに整理できます。

経験上いちばん多いのは、2番目の「分からないから反対」です。金額そのものより、何をどれだけ直すのかが伝わっていないことが理由になっている。調査診断の写真を見せる説明会をはさむだけで、次の総会の空気が変わることがあります。
金額への不信が理由の場合は、3番目が効きます。当社でも他社が作成した見積書のご相談を無料でお受けしています(セカンドオピニオン)。ご発注を前提としたご相談ではありません。
いずれにしても、先送りするほど劣化は進み、次の総会ではさらに高い金額を出すことになります。範囲を絞ってでも、緊急性の高い部位から着手するほうが結果的に総額は下がります。
八王子・首都圏の管理組合の大規模修繕は巧正へ
巧正株式会社は八王子市を拠点に、創業12年・市内で累計1,000件超の外壁・防水・大規模修繕を手がけてきました。管理組合様の合意形成のご支援(説明会資料・見積比較の観点整理)から、建物診断・施工・保証まで、丸投げしない元請け一貫体制でサポートします。


管理組合向けの総合案内は管理組合のマンション大規模修繕、大規模修繕の費用・周期の基礎は大規模修繕とは?費用・周期・流れをご覧ください。
よくある質問
Q. 大規模修繕は総会の何決議が必要ですか?
A. 工事内容によります。共用部分の重大な変更を伴う場合は特別決議(区分所有者・議決権の各3/4以上)、原状回復にとどまる修繕は普通決議(各過半数)で足りる場合があります。議案作成時に管理規約と工事内容を照らして確認します。
Q. 住民の同意はどのくらい必要ですか?
A. 普通決議は過半数、特別決議は3/4以上が目安です。ただし決議要件を満たすだけでなく、反対住民への説明を尽くして「納得感のある合意」を形成することが、工事中のトラブル防止につながります。
Q. 合意形成がうまくいきません。どうすれば?
A. 事前説明会での丁寧な説明、議事録・検討経緯の共有、相見積もりによる費用の根拠提示が有効です。反対意見の背景(費用・工事中の生活)に具体的に答えることが賛成につながります。
Q. 見積もりは何社取ればいいですか?
A. 3社程度の相見積もりが一般的です。総額だけでなく、数量内訳・仕様・単価・保証・実績を同条件で比較し、極端に安い場合は仕様が落ちていないか確認します。
Q. 建物診断や見積もりは無料ですか?
A. はい、建物診断・お見積もり・説明会用資料のご相談まで無料で対応しています。八王子市・多摩地域を中心に、東京・神奈川・埼玉・山梨の首都圏で管理組合様のご相談を承ります。
総会・合意形成の進め方でお悩みの管理組合様へ
八王子の巧正が、建物診断・相見積もりの比較観点・説明会資料づくりまでご支援します。まずは無料相談から。
管理組合・オーナー様へ|まずは”無料メニュー”からお気軽に
- 他社見積の無料セカンドオピニオン…金額・仕様が妥当か、第三者の目でチェックします
- 建物の無料診断+長期修繕計画のご相談…修繕の時期・優先順位・概算をご提示
- 相見積もり歓迎…他社と比較していただいて構いません。しつこい営業はしません
対応:八王子市・多摩地域を中心に、東京・神奈川・埼玉・山梨の首都圏。元請け一貫で調査から保証まで。
執筆・監修:巧正株式会社 施工管理部(外壁診断士・2級建築施工管理技士補(仕上げ)在籍)|八王子市内 累計1,000件超の施工実績
Q. 2026年の法改正で、決議は取りやすくなったのですか?
A. 普通決議については、母数が「区分所有者全員」から「集会に出席した区分所有者」に変わったため、実務上は取りやすくなっています。ただし出席を集めること自体は変わらず必要です。委任状・議決権行使書を含めて出席を確保する運用は、これまでどおり重要です。
Q. 外壁塗装と防水だけなら、特別決議は要りませんか?
A. 形状または効用の著しい変更を伴わない工事は、区分所有法第18条の「管理」にあたり普通決議で実施できるとされています。ただし個別の工事がどちらにあたるかは範囲・態様・程度から判断されるため、不安がある場合は総会前に専門家へご確認ください。
Q. 空室や所有者不明の住戸が多く、決議が取れません。
A. 改正で、裁判所が「所在等不明」と認定した区分所有者を決議の母数から除外できる制度が新設されました(改正後区分所有法第38条の2)。裁判所への請求が必要で時間もかかるため、早めに弁護士へご相談ください。
Q. 議案書に見積書の内訳まで載せる必要がありますか?
A. 法律上の義務ではありませんが、載せたほうが決議は通りやすいです。総会で必ず出る「なぜこの金額なのか」に、その場で答えられるかどうかが分かれ目になります。
Q. 総会の前に、見積の内容だけ相談することはできますか?
A. 可能です。当社では他社が作成した見積書についてのご相談を無料でお受けしています。理事会の資料づくりの段階でも構いません。
