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共用廊下の長尺シート張り替え|劣化サイン・工程・端末シール・工期

マンションやアパートの共用廊下・階段の床に張られている長尺シートは、防滑性ビニル床シートとも呼ばれる塩化ビニル製の床材です。大規模修繕では、古いシートをはがして新しいシートに張り替える工事がよく行われます。

この記事では、張り替えを考える劣化のサイン、シートの断面と各部の名前、撤去から端末シールまでの工程、ウレタン塗膜防水で全面を塗る方法との違い、工期と居住者への配慮を、メーカーの施工要領と当社の現地調査の写真をもとに解説します。見積書の項目の読み方は「長尺シートの見積の読み方」の記事にまとめています。

先に結論をまとめます。

  • 張り替えを考えるサインは、シートの膨れ・はがれ・継目の不良・色あせ・縮みです。床の防水層やシートの裏に水が回ると、下のコンクリートの含水率が上がり、中性化が進むおそれがあるとされています
  • 工事は「既存シートの撤去→下地調整→接着剤で張る→継目の溶接→端部のシール」の順です。タキロンの要領では、既存の床材をはがしてから張ることを基本としています
  • 水が入りやすいのは、シートの「面」より、継目・端部・巾木・側溝といった「線」の部分です。端末シールは、シートの端から水が入らないようにふさぐ処理です
  • タキロンの要領では、張った後に1〜2日、端部のシール後に2〜3日の養生をとります。気温5℃以下や水濡れのときは施工しないため、屋外の廊下は天候で日程が動きます
  • REPCO の比較表では、シートは半分ずつ施工すれば工事中も通行できるとされています。費用は㎡(面積)だけでなく、m(端末シール・巾木・側溝の長さ)と段(階段の段数)で決まります
目次

長尺シートとは|共用廊下・階段の床に張る防滑性ビニル床シート

長尺シートは、ロール状で長さのあるビニル床シートの通称です。共用廊下・階段・バルコニーなど屋外に面した床には、表面に細かな凹凸をつけて滑りにくくした「防滑性ビニル床シート」が使われます。

タキロンシーアイの「タキストロン」、東リの「NSシート」などが、屋外に面した床に使われる製品の例です。階段には、段鼻(段の先端)と踏面が一体になった階段用の製品(タキロンシーアイの「タキステップ」、東リの「NSステップ800」など)があります。

項目メーカーの公表内容(例)
規格JIS A 5705(ビニル系床材)の床シート。東リ NSシート NS800 は品種「複層ビニル床シート FS」
厚さ東リ NSシート NS800 は全厚2.5mm(凸部)。タキロンマテックスの販売する「タキストロンBA」は厚さ2.5mm
幅・長さNS800 は幅1,620mm・長さ20m。タキストロンBA は幅1,820mm/1,350mm・長さ10m
屋外での使用NS800 は「屋外対応」。耐候性マークで「長時間直射日光のあたる場所でも使用可能」と説明
階段用タキステップ5W は段鼻から踏面・蹴込みまで一体(段鼻厚さ4.2mm・踏面厚さ2.5mm)。NSステップ800 は蹴込み一体のAタイプと踏面のみのBタイプ
出典:東リ「NSシート NS800」製品ページ、同「東リ NSステップ800」カタログページ、タキロンマテックス「タキストロンBA」「タキステップ5W」「階段用床材タキステップ」製品ページ

長尺シートは、床の仕上げと滑り止めのための材料です。水を止める役割は、シートの継目と端部の処理、巾木や側溝の防水と組み合わせて果たします。次の章で、その組み合わせを断面で見ていきます。

長尺シートの断面と各部の名前|接着剤・継目の溶接・端末シール

張り替え後の床は、コンクリートの上に下地調整、接着剤、シートの順に重なります。シートどうしの継目は溶接棒で溶かしてつなぎ、シートの端は端部処理材(端末シール)でふさぎます。

図解 長尺シートの断面 下地調整 接着剤 防滑性ビニル床シート 継目の溶接と端末シール
図解:長尺シートの断面。コンクリートの床の上に下地調整・接着剤・シートが重なり、継目は溶接、側溝側の端は端部処理材でふさぐ(層の厚みは誇張した模式図)

共用廊下を幅方向に切ると、シートを張る「面」のほかに、住戸側の壁の巾木、手すり壁の足元の側溝など、長さで数える「線」の部分があります。建物によっては、巾木や側溝をウレタン塗膜防水で仕上げ、シートの端を端末シールでつなぎます。

図解 共用廊下の幅方向の断面 巾木 長尺シート 端末シール 側溝
図解:共用廊下の幅方向の断面の例。シートを張る「面」と、巾木・側溝・端末シールの「線」に分かれる。巾木・側溝の仕上げと納まりは建物によって異なる(模式図)

実際の共用廊下では、次の写真のように見えます。当社が2026年9月に現地調査した共同住宅(都内近郊)の開放廊下です。

都内近郊の共同住宅 開放廊下の防滑性長尺シートと巾木
現地調査:開放廊下の床。表面に丸い粒状の凹凸があるシートが張られ、左の住戸側の壁際には巾木があり、シートは右の手すり壁の足元に向かって張られている(2026年9月撮影)
都内近郊の共同住宅 開放廊下のシートと手すり壁の足元
現地調査:同じ開放廊下を別の角度から。シートは手すり壁の足元まで張られ、壁際に細い黒い線と、丸い穴が見える(2026年9月撮影)

張り替えを考える劣化サイン|膨れ・はがれ・継目・端部

一般社団法人マンションリフォーム推進協議会(REPCO)は、開放廊下の防滑性シートの劣化として、膨れ・はがれ・継目の不良・直射光による変退色・収縮を挙げています。床の防水層やシートの裏に水が回ると、躯体コンクリートの含水率が上がり中性化が進むおそれがあるため、目視での定期的な観察をすすめています。

症状見る場所確かめたいこと
膨れ・浮き(歩くとぶかぶかする)廊下の中央、住戸の玄関前シートの裏に水や湿気が回っていないか
はがれ・めくれシートの端、側溝側、階段の段鼻端部処理(端末シール)が切れていないか
継目の割れ・すき間シートどうしの継目溶接部が開いていないか、汚れがたまっていないか
色あせ・縮み日が当たる手すり壁側縮んで端や継目にすき間ができていないか
巾木・側溝の傷み壁際の立上り、側溝の底塗膜のはがれ、排水口まわりの水たまり
劣化の種類はREPCO「開放廊下床の改修」による。見る場所と確かめたいことは当社の整理

シートそのものがまだきれいでも、端末シールや継目が切れていれば、そこから水が入ります。点検では面の汚れより、端・継目・段鼻の「線」を先に見ると、張り替えの時期を判断しやすくなります。

張り替え工事の流れ|撤去から端末シールまで

ここでは、タキロンマテックスが公開している「タキストロン施工方法」をもとに、張り替えの工程を順に説明します。製品が変われば接着剤や数値も変わるため、実際の工事は採用する製品の施工要領に従います。

1. 既存シートの撤去

タキロンマテックスが掲載している「工法・下地」の資料では、既設の床材をはがしてから張るのが基本とされ、湿気の出る下地では既設の床材が浮き上がることがあるため、はがすよう求めています。国の公共建築改修工事標準仕様書(令和7年版)でも、「既存床の撤去及び下地補修」は、ビニル床シート張りとは別の節として定められています。

2. 下地の清掃と下地調整

撤去後は、残った接着剤や砂・ほこりを取り除きます。タキロンマテックスの施工要領では、下地が十分に乾燥して強度があること、表面が平滑でひび割れや突起がないこと、適切な水勾配があることを確認項目に挙げています。見積書での下地調整の行の読み方は、冒頭で紹介した「長尺シートの見積の読み方」の記事で扱っています。

3. 割り付けと仮敷き

継目ができるだけ少なく、端に小さなシートが入らないように割り付けます。施工要領では、端部処理材の仕上げ代として、端部は側溝の端から5mm以上、壁際は3mm程度のすき間をあけるとしています。シートには方向性があるため、同じ向きに仮敷きして巻きぐせを取ります。

4. 接着剤を塗って張り、圧着する

シートを半分ずつ折り返し、下地に専用の接着剤(タキボンド#607・#701はウレタン樹脂系一成分形、#601はエポキシ樹脂系二成分形)を塗ります。エポキシ系は主剤と硬化剤を別容器で撹拌します。接着剤ごとにオープンタイム(塗ってから張るまで置く時間)があり、20℃の目安で#607は20〜30分です。短すぎるとガス膨れ、長すぎると接着力の低下につながるとされています。中央から張り、ローラーで空気を抜きながら圧着します。

5. 養生(1〜2日)してから継目を溶接する

接着剤が硬化するまで1〜2日養生します。継目は、溝切り機でシート厚の2/3程度のU字溝を切り、熱風溶接機で溶接棒を溶かしながら溶接します。溶接棒が冷えてから、盛り上がった部分を削って平らにします。国の標準仕様書でも、熱溶接機でビニル床シートと溶接棒を同時に溶融して溶接する方法が示されています。

6. 端部処理(端末シール)

シートの端を端部処理材(タキシール#600)でふさぎます。マスキングテープで養生し、気泡を巻き込まないように塗ってヘラで平らにします。完全屋外の吸水性下地では、先にプライマー(タキボンド#625)を塗ります。伸縮目地がある場合は、目地の手前で仕上げて目地を出しておきます。

7. 養生(2〜3日)

シール材が硬化するまで2〜3日養生し、硬化までは触ったり踏んだりしないよう求めています。養生中は土足歩行を控え、必要に応じて養生シートを使います。巾木や側溝をウレタン塗膜防水で仕上げる建物もあります。どの段階で行うかは仕様書で決まります。

  • 施工から養生が終わるまで、気温・下地とも5℃以下にしない
  • 急な温度変化や水濡れがあるときは施工しない
  • 硬化前に重い物を運ばない。運ぶときは硬化後にベニヤ板などを敷く

上の3点は、タキストロン施工方法に書かれている施工・養生の条件です。屋外の開放廊下では、雨や冬の朝晩の冷え込みで作業日が動く理由がここにあります。

階段・踊り場の張り替え|段鼻とノンスリップ

階段の段には、段鼻を含む階段用のシートが用意されています(タキロンシーアイの「タキステップ」、東リの「NSステップ800」など)。階段用の製品は、人が足を掛ける段鼻を踏面より厚くしています。八王子市内のマンションの内訳書(管理組合から提示されたもの)や当社の見積書でも、階段は踊り場(㎡で数えるシート)と段(段数で数える階段用シート)に分かれていました。

図解 階段の段鼻まわり 段鼻一体の階段用シート 踏面 蹴込み 段鼻下の端部処理
図解:段鼻一体の階段用シートを張った階段の断面。段鼻は踏面より厚く、段鼻の下は端部処理をする(模式図)

「工法・下地」の資料では、段鼻下部の端部処理は、前垂れの浮きや段鼻の破損を抑えるため必ず行うとしています。また、踏面と蹴込み面の角度が80度以下の階段には施工できないとしています。東リの NSステップ800 では、継目は東リNSシールか専用溶接棒による熱風溶接、端部は東リNSシールで処理します。

都内近郊の共同住宅 階段の踊り場の床シートと段鼻の黒い部材
現地調査:階段の踊り場。床と段は明るい色のシートで仕上げられ、段の先端(段鼻)に黒い部材が入っている。壁際には巾木がある(2026年9月撮影)
都内近郊の共同住宅 1階から上がる階段の踏面 蹴込みのシートと段鼻
現地調査:1階から上がる階段。踏面と蹴込みがシートで覆われ、段の先端に金属色の線が見える(2026年9月撮影)

既存の段鼻に滑り止め材(ノンスリップ)が付いている場合に撤去するかどうかは、採用する階段用シートの施工要領と、現地の段鼻の状態で決まります。当社が2026年8月に作成した都内のマンションの見積書では、「既存ノンスリップ撤去・処分」と「階段室 踏面・蹴込み 長尺シート貼付(タキロン タキステップ5W)」を、どちらも段数で計上しました。この建物の階段は既存がタイル張りで、タイル面の上に下地調整をしてから張る仕様です。

既存の階段がタイル張りの場合、タキロンの「工法・下地」では、磁器タイルは床材ではなく下地として扱い、樹脂モルタルで目地詰めして上塗りする扱いです(既存の床シートをはがす話とは別)。また、階段の段鼻部分に埋め込まれている磁器タイルは撤去を基本とし、段差はカチオン系樹脂モルタルで補修するとしています。

ウレタン塗膜防水(全面塗布)との違い

共用廊下の床の改修には、長尺シートのほかに、ウレタン塗膜防水を床全面に塗る方法もあります(塗床と呼ばれることもあります)。REPCOは開放廊下の床の改修方法を次のように比べています(同協議会の比較表から抜粋)。

項目ウレタン塗膜防水(全面塗布)ウレタン塗膜防水+塩ビ製防滑シート
意匠性単調多彩
歩行感適度な硬さ適度な硬さ
防滑性防滑処理なしだと雨水がたまったときに滑りやすい水に濡れても滑りにくい
衝撃音吸収性工法により吸収材質により低減
工事中の歩行通行止めが発生歩行可能(シートは半分ずつ施工)
メンテナンス性容易エンボス形状のため定期的な清掃が必要
出典:一般社団法人マンションリフォーム推進協議会(REPCO)「開放廊下床の改修」の比較表から抜粋(モルタル仕上げの列は省略)。

ウレタン塗膜防水は液状の材料を塗り重ねるので、継ぎ目がなく、側溝や巾木のような複雑な形にも沿わせやすい工法です。一方、層ごとに硬化を待つ必要があり、例えば日本特殊塗料のプルーフロンエコHGでは、施工間隔は23℃で18〜72時間以内とされています。ウレタン防水の工法と工程は「ウレタン防水とは」の記事で解説しています。

  • 長尺シートが合いやすい:工事中も廊下を通る必要がある、歩く音を抑えたい、色柄を選びたい
  • ウレタン塗膜防水が合いやすい:側溝・巾木・排水口まわりなど形が複雑、面積が小さい、継ぎ目のない仕上げにしたい
  • 組み合わせる例:八王子市内のマンションの内訳書(管理組合から提示されたもの)では、廊下の平らな面はシート、巾木と側溝はウレタン塗膜防水で、別の行に分かれていた
  • 見積書で確かめること:シートを張る面と、巾木・側溝の防水が別の行に分かれているか、一式にまとめられているか

工期の考え方と居住者への配慮

長尺シートの張り替えは、張る日・継目と端部を処理する日・養生の日に分かれます。1区画あたりの流れは「張る→1〜2日養生→継目の溶接・端末シール→2〜3日養生」です(タキロンマテックスの施工要領の値を足したもので、当社の実績ではありません)。全体の日数は、廊下の長さ、区画の分け方、階段の段数、天候で変わるため、工程表で区画ごとの作業日と養生日を確認しておきます。

共用廊下は、住戸の出入りに必ず通る場所です。REPCOの比較表では、シートは半分ずつ施工することで工事中も歩行できるとしています。養生中のシートの上を通る場合は、養生シートや板を敷いて歩く場所を示します。

  • 区画ごとの作業日と、通れる側・通れない側(掲示や工事のお知らせで事前に伝える)
  • 玄関前の私物(傘立て・植木鉢・自転車など)を移動してもらう日
  • 養生中に踏まないでほしい場所と期間、雨で順延になったときの連絡方法
  • 階段を片側ずつ施工する場合の迂回路、車いす・ベビーカーの方への個別の案内

当社の作業時間は平日8〜17時で、日曜・祝日は休工です。居住者説明会で生活への影響をどう伝えるかは「管理組合向け大規模修繕の進め方|全10ステップ」の記事も参考にしてください。

費用の決まり方|見積書を構成する工程と単位

長尺シートの張り替えの費用は、シートの面積だけでは決まりません。メーカーの施工要領と国の改修標準仕様書の構成をもとに、見積書を構成する工程を整理します(単価・金額は掲載していません)。

見積書の工程(項目の例)施工要領・仕様書での内容数量を左右するもの
既存床材の撤去・処分既設の床材をはがしてから張るのが基本。改修標準仕様書では「既存床の撤去及び下地補修」の節がある床の面積、既存の床材の種類
下地清掃・下地調整(補修)乾燥・強度・平滑さ・ひび割れ・水勾配を確認し、整える。磁器タイル下地は目地詰めと上塗り下地の傷み方、既存の仕上げ
シート張り(接着剤を含む)専用の接着剤で張り、ローラーで圧着する床の面積、割り付け
継目の溶接U字溝を切り、溶接棒を熱風溶接する継目の長さ(シートの幅と割り付け)
端部処理(端末シール)側溝側5mm以上・壁際3mm程度の仕上げ代を取り、端部処理材でふさぐシートの端の長さ
階段用シート(段鼻を含む)段鼻一体の階段用シートを張り、段鼻下部も端部処理をする段数、階段の幅
巾木・側溝の防水どの材料・どの段階で行うかは建物の仕様書で決まる巾木・側溝の長さ
養生張った後1〜2日、端部処理後2〜3日。養生中は土足歩行を控える区画の数、天候
出典:タキロンマテックス「タキストロン施工方法」、タキロンシーアイ「工法・下地」、東リ「NSステップ800」、国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」の目次をもとに当社で整理

見積書では、これらの工程が別の行に分かれているか、一式にまとめられているかを確認します。実際の書かれ方の例として、当社が2026年8月に作成した都内のマンションの見積書(長尺シート工事の欄)の項目と単位を示します。

見積書の項目(この見積書の表記)単位数量を左右するもの
既存ノンスリップ撤去・処分段階段の段数
長尺シート 下地調整(既存タイル面の上に施工、カチオン樹脂系、金鏝仕上げ)式既存の床の種類と傷み方
階段踊り場 長尺シート㎡踊り場の面積
階段室 踏面・蹴込み 長尺シート貼付(タキロン タキステップ5W、幅900)段段数と階段の幅
長尺シート端末シールmシートの端の長さ
当社が2026年8月に作成した都内のマンションの見積書(長尺シート工事の欄)の項目と単位。単価・金額は掲載していません

共用廊下では、ここに巾木・側溝のウレタン塗膜防水(m)や、既存シートの撤去・下地清掃(㎡)が加わります。先に触れた八王子市内のマンションの内訳書でも、廊下の床はシート張り(㎡)、端末シール・巾木・側溝はmで分かれていました。区分ごとの保証の書かれ方や、数量が空欄の「実数精算」の行の読み方は、冒頭で紹介した「長尺シートの見積の読み方」の記事で詳しく扱っています。

よくある失敗と注意点|下地・温度・排水口まわり

張り替えの仕上がりは、シートの品番より、下地と端部の処理で決まります。タキロンマテックスの施工要領をもとに、工事の前に確かめておきたい点を挙げます。

  • 既存シートの上に重ねる:タキロンマテックスの施工要領では既設の床材をはがすのが基本(重ね貼りは見積の記事の「既存のシートの上に重ね貼りはできますか」も参照)
  • 下地の水分:湿気のある下地は乾燥するまで養生する。タキロンマテックスの施工要領では高周波式水分計による含水の目安を示している
  • 接着剤のオープンタイム:短すぎるとガス膨れ、取りすぎると接着力が落ちる。気温で時間が変わる
  • 低温・雨天の施工:5℃以下や水濡れでは施工しない。冬場や梅雨どきは予備日を含めた工程にする
  • 排水口まわり:シートの端は排水口の手前で納まることが多く、排水口の金物は別の工事(塗装や改修用ドレン)で扱われる。詳しくは「改修ドレン(改修用ドレン)とは」で解説している

東リは NSステップ800 のカタログで、夏場はシールが膨れることがあるためNSシールのB液を減らす調整を示し、その場合は24時間程度歩行を避けるよう注記しています。季節によって養生の扱いが変わることも、工程表の確認ポイントです。

共用廊下の長尺シート張り替えのよくある質問

Q. 工事中も共用廊下は通れますか?

REPCOの比較表では、シートは半分ずつ施工することで工事中も歩行できるとしています。ただし、張った直後やシールの硬化前は踏めない場所があります。区画ごとの作業日と通れる側を、工事のお知らせや掲示で事前に確認してください。

Q. 雨の日も工事できますか?

タキロンマテックスの施工要領(タキストロン施工方法)では、気温・下地が5℃以下のとき、急な温度変化や水濡れがあるときは施工しないとしています。屋外の開放廊下では、雨の日や下地が濡れている日は作業を見送り、日程が後ろにずれることがあります。

Q. 張り替えたあと、いつから普通に歩けますか?

タキロンマテックスの施工要領では、張った後に1〜2日、端部のシール後に2〜3日の養生をとり、シールが硬化するまでは触ったり踏んだりしないよう求めています。歩行開始の時間はタキロンマテックスの施工要領に記載がないため、製品と季節に合わせて工程表で確認します。

Q. 端末シールと継目の溶接は何が違いますか?

継目の溶接は、シートとシートのつなぎ目を、溶接棒を溶かし込んでふさぐ処理です。端末シールは、シートの端(側溝側や壁際)を端部処理材でふさぐ処理です。どちらも長さ(m)で数える「線」の部分で、水が入りやすい場所です。

Q. 長尺シートとウレタン塗膜防水は、どちらがよいですか?

建物の形と、工事中の通行の条件で決まります。長尺シートは防滑性や歩行音、工事中の通行の面で有利とされ、ウレタン塗膜防水は継ぎ目がなく複雑な形に沿わせやすい工法です。八王子市内のマンションの内訳書(管理組合から提示されたもの)では、廊下はシート、巾木と側溝はウレタン塗膜防水と組み合わせていました。見積書では、シートの面と巾木・側溝の防水が別の行になっているかを確認します。

Q. 階段のノンスリップも交換しますか?

既存のノンスリップを撤去するかどうかは、採用する階段用シートの施工要領と、現地の段鼻の状態で決まります。当社が作成した都内のマンションの見積書では、既存の段鼻の滑り止め材について「既存ノンスリップ撤去・処分」を段数で計上しました。段鼻に磁器タイルが埋め込まれている場合は、これとは別に、タキロンの「工法・下地」では撤去を基本としています。見積書では、撤去が別の行にあるかを確認します。

巧正の共用廊下・階段の床改修への対応

巧正株式会社は、八王子市を拠点に外壁塗装・防水工事・大規模修繕などの建物修繕を行う会社です。元請け一貫体制で、現地調査・見積・工程管理・完工後の点検までを当社が担当し、床の工事は協力職人と組んで施工します。

  • この記事の写真は、当社が現地調査で撮影したものです。廊下・踊り場・階段の床と、巾木・側溝・段鼻の状態を写真に残しました
  • この記事で紹介した都内のマンションの見積書では、シート・下地調整・端末シール・ノンスリップ撤去を、㎡・m・段・式の単位に分けて記載しました
  • 作業は平日8〜17時、日曜・祝日は休工です。引き渡し後は1年・3年・5年・10年の定期点検を行います

東京都知事許可(般-7)第161006号。創業2014年4月、2023年10月に法人化し、累計1,000件超の工事を手がけてきました。共用部の床改修を含む大規模修繕全体の進め方は「八王子市の大規模修繕」のページにまとめています。

共用廊下・階段の床改修のご相談・現地調査のご依頼

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執筆・監修:巧正株式会社(外壁診断士・2級建築施工管理技士補 在籍)

出典・参考資料

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