脱気筒とは|役割・脱気盤との違い・設置数の目安・交換の流れ
脱気筒(だっきとう)は、屋上の防水層の下にたまった湿気(水蒸気)を外へ逃がすための部材です。屋上の床から金属の筒が立ち上がっているのを見て、「これは何のためにあるのか」「古くなったら交換が必要か」と気になった方もいると思います。
この記事では、脱気筒の役割、平型の脱気盤との違い、必要な工法と不要な工法、設置数と位置の目安、劣化サイン、見積書での書かれ方を、国土交通省の標準仕様書とメーカーの公表資料、そして八王子市内のビルの屋上で当社が行った脱気盤から脱気筒への交換の写真で解説します。
先に結論をまとめます。
- 脱気筒は、防水層の下の湿気を外へ出す「出口」です。膨れを抑えるための部材で、雨水を止める部材ではありません
- 主に使うのは通気緩衝工法(仕様書の種別X-1)です。密着工法(X-2)の工程には脱気装置は含まれていません
- 設置数は設計図書の指定に従い、指定がなければ防水材メーカーの仕様によります(例:田島ルーフィングは70〜80㎡に1か所、シーカ・ジャパンは100㎡あたり1か所以上)
- 形には、床に低く付く平型(脱気盤)と、筒が立ち上がる立上り型(脱気筒)があります。この記事の現場では、平型を立上り型に交換しました
- 見積書では「脱気筒 設置」が箇所単位で書かれます。既存の撤去と、まわりの部分防水が別の行で入っているかを確認すると比べやすくなります
脱気筒とは|防水層の下の湿気を外へ逃がす出口
コンクリートの下地や古い防水層には、雨水や施工時の水分が残っていることがあります。日射で屋上が温められると、この水分が水蒸気になって膨らもうとします。逃げ場がなければ防水層を下から押し上げ、膨れの原因になります。
脱気筒は、この水蒸気を防水層の外へ出すための出口です。通気緩衝工法では、防水層の下に張った通気緩衝シートが水蒸気を横に運ぶ通り道になり、脱気筒がそれを外へ出します。呼び名は資料によって異なり、仕様書では「脱気装置」、メーカーの製品名では「ステンレスベーパス」(田島ルーフィング)や「ステンレスベントN」(シーカ・ジャパン)などと書かれています。
- 役割:防水層の下の水蒸気を外へ出し、膨れを抑える
- 働く条件:防水層の下に、水蒸気が集まる通り道(通気緩衝シートなど)がある
- 役割ではないこと:雨水を止めること。脱気筒の根元は、防水層に穴をあけて納める部分でもある
脱気盤(平型)と脱気筒(立上り型)の違い
脱気装置には、床面に低く平たく付くものと、筒が床から立ち上がるものがあります。この記事では、前者を「脱気盤(平型)」、後者を「脱気筒(立上り型)」と呼んで区別します。下の写真は、同じ屋上に両方が並んでいる様子です。

| 項目 | 脱気盤(平型) | 脱気筒(立上り型) |
|---|---|---|
| 形 | 床面に低く、円盤状に付く | 筒が床から立ち上がる |
| 湿気の出口の高さ | 床面に近い | 床から離れた位置にある |
| この記事の現場の製品 | 金属製の円形のふた(中心に穴) | 山装「ダモ脱気筒」(一般用・丸型)。ステンレス製で、筒の上にふた、側面に縦長の開口 |
| この記事の現場での扱い | 屋上に4か所あり、雨漏りの直上と想定した1か所を撤去 | 撤去した位置に新しく設置 |

この記事の現場では、平型の脱気盤のまわりに雨水がたまりやすく、浸入の弱点になりやすいと判断しました。そのため、本体が立ち上がっていて雨水が滞留しにくい立上り型の脱気筒に交換しています。どちらの形を使うかは、防水材メーカーの仕様と、屋上の勾配や水のたまり方を見て決める項目です。
脱気筒が必要な工法・不要な工法|通気緩衝工法と密着工法
脱気筒が働くのは、防水層の下に水蒸気の通り道がある工法です。ウレタン塗膜防水でいえば、通気緩衝シートを張る通気緩衝工法(X-1)が該当します。防水層を下地に直接塗り付ける密着工法(X-2)は、下地が乾いていることを前提にした工法で、仕様書の工程に脱気装置は含まれていません。
| 項目 | 通気緩衝工法(X-1) | 密着工法(X-2) |
|---|---|---|
| 防水層の下 | 通気緩衝シート(水蒸気の通り道) | 下地に直接密着(通り道はない) |
| 下地の水分 | シートの裏側から脱気装置へ逃がす | 下地が乾いていることが前提 |
| 脱気装置 | 種類と設置数量は特記による。特記がなければ製造所の仕様による | 工程に含まれない |
| 使う部位 | 平場 | 平場・立上り(立上りはすべてX-2) |
通気緩衝シートの種類や張り方は「通気緩衝シートとは」で解説しています。シートが通り道、脱気筒が出口という関係で、どちらか一方だけでは湿気を逃がす仕組みになりません。
改修工事では、すでに脱気装置が付いている屋上を、新しく密着工法で塗り重ねることもあります。その場合、既存の脱気装置を撤去して塞ぐのか、交換して残すのかは、改修の計画のなかで決める項目です。工法の選び方や費用の比べ方は「ウレタン防水とは」の記事にまとめています。
脱気筒の設置数と位置の目安|仕様書とメーカーの公表値
脱気筒の数は、まず設計図書の指定(特記)に従います。指定がない場合は、防水材メーカーの仕様によります。確認できた目安は次のとおりで、資料によって幅があります。
| 出所 | 設置数の目安 | 位置 |
|---|---|---|
| 公共建築工事標準仕様書(令和7年版)9.5.3 | 種類と設置数量は特記による。特記がなければ製造所の仕様による | - |
| 田島ルーフィング(X-1 令和7年版の仕様ページ) | 特記がなければステンレスベーパス類(脱気装置)を70〜80㎡あたり1か所 | - |
| シーカ・ジャパン(DSカラー・ゼロ 通気緩衝工法) | ステンレスベントNを100㎡あたり1か所以上(新築の場合は50㎡あたり1か所以上) | 水平床の水上部 |
| AGCポリマー建材(サラセーヌ QV工法) | - | シート裏面の粘着層のない溝の部分を直径30mm程度切り抜き、その上に設置 |
| JASS 8(日本建築学会)で示される目安 | 防水層25〜100㎡に1個(当社記事「屋上防水の劣化サイン7つ」で紹介) | - |
位置は、シーカ・ジャパンの資料にあるように、水蒸気が集まりやすい勾配の高い側(水上)が基本です。あわせて、サラセーヌの例のように、通気緩衝シートの通り道と脱気筒の穴がつながっている必要があります。屋上が立上りや設備の基礎で区切られている場合は、区画ごとに出口が要るかどうかも計画の対象です。

寿命と劣化サイン|点検で見るところ
脱気筒単体の耐用年数の公表値は、この記事では確認できていません。脱気筒は防水層と一体で働く部材なので、防水層の点検や改修のときに、あわせて状態を見て交換するかを決めます。点検では、次のような変化がないかを見ます(当社が点検で見る箇所)。
- 本体やふたの錆、変形、ふたの外れ
- 根元の防水層やシールの切れ・はがれ・浮き
- 脱気装置のまわりに水がたまった跡や、土砂・コケの付着
- 脱気筒があるのに、まわりの防水層に膨れが出ている(数や位置、通り道とのつながりを確認する)

膨れが出たときの原因と対処、ほかの劣化サインは「屋上防水の劣化サイン7つ」の記事にまとめています。
脱気盤から脱気筒への交換の流れ|八王子市内のビルの屋上
ここからは、八王子市内のビルの屋上で、2026年8月に行った交換の工程を写真で追います。屋上に4か所ある平型の脱気盤のうち、室内の雨漏りの直上と想定した1か所を、SUS製の立上り型の脱気筒に交換し、まわりを部分的にウレタン防水で補修しました。この記事の現場で取り付けたのは、山装の「ダモ脱気筒」(一般用・丸型)で、ステンレス製の脱気筒です。日付は写真の撮影記録と当社の施工報告書によるものです。
1. 既存の脱気盤の撤去(8月8日)
上の「交換前の脱気盤」の写真で状態を確かめてから、脱気盤を取り外しました。外した跡では、本体の下の防水層と下地の状態を確認しています。


2. 脱気筒の設置(8月8日)
撤去した位置に、SUS製の立上り型の脱気筒を据え、円形の台座をビスで留めました。あわせて、防水材の付きをよくするため、まわりの汚れや油分を拭き取っています。

3. 補強メッシュと取り合いのシーリング(8月8日)
台座のまわりに補強用のメッシュシートを張り、脱気筒と防水面の取り合い(つなぎ目)をシーリング材で処理しました。脱気筒の根元は防水層に穴をあけて納める部分で、このあと塗るウレタン防水とあわせて、根元のまわりを覆います。


4. プライマーとウレタン防水(8月20日)
補修する範囲をテープで四角く囲って養生し、防水材の下塗りとしてプライマーを塗りました。その上からウレタン防水材を塗り重ねています。施工報告書の記録では、この日にウレタン防水材の1層目と2層目を塗りました。


5. トップコートと完了(8月21日)
最後に、紫外線から防水層を守るトップコートを塗って仕上げました。完了時の脱気筒は、筒の上をふたで覆い、側面に縦長の開口が並ぶ形です。


脱気筒で雨漏りは止まるか|湿気の出口と雨水の入口は分けて考える
脱気筒の役割は、防水層の下の湿気を外へ出すことです。雨水を止める部材ではありません。ただし、脱気装置の根元は防水層に穴をあけて納める部分なので、本体やまわりの防水が傷むと、そこが雨水の入口になることは考えられます。脱気装置の交換は、その入口を直す意味を持つ工事です。
この記事の現場の交換も、室内の雨漏りの入口として脱気盤が疑われたために行いました。雨漏りの入口は1か所とは限らないため、交換後も屋上の確認を続け、排水口のまわり、残っている平型の脱気盤、手すりの架台と床の取り合い、パラペットのあごなど、ほかの浸入経路の候補も並べて、屋上全体を含めた対処を検討しています。
防水層の下に入った雨水は層の下を伝って移動することがあり、室内で漏れる位置と実際の入口が離れていることがあります。脱気装置だけを交換するか、ほかの候補を含めて直すかは、屋上全体を確認したうえで決めるのが判断の基準になります。部位ごとの雨漏りの原因は「雨漏りの原因はどこ?部位別の見分け方」で紹介しています。
費用の決まり方|見積書で脱気筒はどう書かれるか
この記事の現場で当社が出した見積書では、脱気筒を箇所単位で、次のような項目に分けて記載しています(金額は掲載していません)。
| 項目 | 規格・摘要 | 単位 |
|---|---|---|
| 既存脱気盤 撤去・処分 | 平型脱気盤 撤去 | 箇所 |
| 脱気筒 設置 | SUS製 立上り型 | 箇所 |
| 脱気筒 周辺 部分防水補修 | 下地調整+プライマー+メッシュ+ウレタン密着+トップコート | 箇所 |
| 脱気盤→脱気筒 交換(屋上全体の防水改修に含める場合) | 既存脱気盤撤去・SUS製 脱気筒設置 | 箇所 |
脱気筒だけを交換する場合は、撤去・設置・まわりの部分防水の3つに分かれ、屋上全体を改修する場合は「交換」の1行にまとまることがあります。金額を左右するのは次の点です。
- 設置・交換する数(箇所)と、既存の脱気装置の撤去・処分が含まれているか
- 脱気筒の材質や形(この記事の現場はSUS製の立上り型)
- 根元のまわりの部分防水の範囲と工程(下地調整・メッシュ・ウレタン・トップコート)
- 単独の補修か、屋上全体の防水改修の一部か
屋上全体の防水改修の費用の考え方は「マンション屋上防水工事の費用相場」の記事で解説しています。
脱気筒のよくある質問
Q. 脱気筒を付ければ雨漏りは止まりますか?
脱気筒は湿気を逃がす部材で、雨漏りを止める部材ではありません。脱気装置まわりの傷みが雨水の入口になっている場合は交換に意味がありますが、ほかにも入口があれば雨漏りは続きます。この記事の現場でも、交換後も屋上全体で浸入経路の候補の確認を続けています。
Q. 脱気盤と脱気筒は、どちらがよいですか?
防水材メーカーの仕様と、屋上の勾配や水のたまり方で決めます。この記事の現場では、平型の脱気盤のまわりに雨水がたまりやすいと判断し、本体が立ち上がった脱気筒に交換しました。
Q. 脱気筒は何㎡に1か所必要ですか?
まず設計図書の指定(特記)に従い、指定がなければ防水材メーカーの仕様で決まります。この記事で確認できた目安は、田島ルーフィングが70〜80㎡あたり1か所、シーカ・ジャパンが100㎡あたり1か所以上(新築は50㎡あたり1か所以上)です。数だけでなく、水上側に置くことと、立上りや設備の基礎で区切られた区画ごとに出口があるかもあわせて見ます。
Q. 脱気筒だけを交換できますか?
できます。この記事の現場では、既存の脱気盤を撤去して脱気筒を据え、メッシュ・シーリング・ウレタン防水・トップコートで根元のまわりを補修しました。ただし、まわりの防水層全体は古いままなので、防水層の状態もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
Q. 脱気筒があるのに膨れが出るのはなぜですか?
脱気筒の数が足りない、位置が水上側にない、防水層の下の通り道と脱気筒の穴がつながっていない、といった場合が考えられます。膨れの範囲と脱気筒の位置を見比べ、原因を確かめてから補修の方法を決めます。
Q. 密着工法で改修するとき、既存の脱気筒はどうしますか?
撤去して塞ぐか、交換して残すかを、既存の防水層の状態とあわせて改修の計画で決めます。見積書に既存の脱気装置の扱い(撤去・交換・存置)が書かれているかを確認してください。
Q. 脱気筒の寿命は何年ですか?
脱気筒単体の耐用年数の公表値は、この記事では確認できていません。防水層の点検や改修のときに、錆・変形・根元の防水の切れを見て、交換するかを判断します。
巧正の脱気筒・屋上防水への対応
巧正株式会社は、八王子市を拠点に屋上防水・外壁塗装などの建物修繕を行う会社です。元請け一貫体制で、現地調査・見積・工程管理・完工後の点検までを当社が担当し、防水工事は協力職人と組んで施工します。
- 脱気装置だけでなく、排水口・立上り・手すりの架台・パラペットなど屋上全体を確認し、雨水の入口の候補をご説明します
- 見積書では、脱気筒の撤去・設置・まわりの部分防水を分けて記載します
- 保証:屋上防水(全面改修)は平場10年・立上り5年。部分補修は保証の有無・年数を見積時にお伝えします
- この記事の現場では、工程ごとの写真と屋上全体の確認結果を施工報告書にまとめました
東京都知事許可(般-7)第161006号。創業2014年4月、2023年10月に法人化し、累計1,000件超の工事を手がけてきました。屋上の脱気筒の傷みや膨れ、雨漏りの原因が分からない段階でもご相談ください。
屋上の膨れ・雨漏り・防水改修のご相談・現地調査のご依頼
執筆・監修:巧正株式会社(外壁診断士・2級建築施工管理技士補 在籍)
出典・参考資料
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」9章5節 塗膜防水(抜粋:日本ウレタン建材工業会 https://www.nuk-pu.jp/technical/assets/files/method/koukyo_kentiku-R7.pdf)
- 田島ルーフィング「塗膜防水 X-1(絶縁工法)(令和7年版)」 https://bousui.tajima.jp/category/coating/WF_SPEC_PBC_X_1_1_1_FINP_1_PBCR4_202502_1/
- シーカ・ジャパン「DSカラー・ゼロ」カタログ https://jpn.sika.com/dam/dms/jp01/roofing/brochure/DK112_dscolor-zero.pdf
- AGCポリマー建材「サラセーヌ 通気緩衝QV工法」 https://www.saracenu.com/guide/method/qv//「ウレタン塗膜防水システム サラセーヌ総合カタログ」 https://www.saracenu.com/download/pdf/saracenu-a4.pdf
- 株式会社山装「ダモ脱気筒(ステンレス)」製品ページ https://yamaso-y.co.jp/product/stainless/
