マンション・アパート・ビルの修繕は、無料の建物診断から無料診断のお申込み →

タスペーサーとは|縁切りの役割・必要な屋根・入れる時期と費用の決まり方

タスペーサーは、スレート屋根を塗り替えるときに、屋根材の重なり部に差し込んで隙間を確保する小さな樹脂製の部材です。塗料で重なりの隙間がふさがらないようにする「縁切り(えんきり)」という作業を、塗装の前に済ませるために使います。

この記事では、タスペーサーという部材そのものに絞り、縁切りが必要な理由、01と02の違い、必要な屋根・不要な屋根、入れる時期と数の目安、見積書での書かれ方を、製造元セイムの公表情報と、八王子市内の戸建てで当社が行った屋根塗装の写真で解説します。塗装と雨漏りの関係は「屋根塗装で雨漏りは直る?」の記事で扱っています。

先に結論をまとめます。

  • スレート屋根の塗り替えでは、縁切りは原則として必要です。タスペーサーは、その縁切りを塗装の前に済ませるための部材です
  • 縁切りをしないと塗膜で重なりの隙間がふさがり、雨水が毛細管現象で重なりの奥へ回りやすくなります
  • 瓦屋根・金属屋根には使いません。スレートでも、屋根材の間にすでに4mm以上の隙間があれば不要とメーカー(セイム)は説明しています
  • 見積書では、「タスペーサー」の行(㎡か一式)があるかで確認できます
目次

タスペーサーとは|スレート屋根の「縁切り」をするための部材

タスペーサーは、株式会社セイムが開発・販売している、平板スレート屋根の塗り替え用の縁切り部材です。セイムは、屋根塗装に欠かせない縁切りを適切に行うために開発した、平板スレート屋根専用の部材と説明しています。

スレート屋根は、薄い板状の屋根材を少しずつずらして重ねて葺いた屋根です。セイムによると、新築時の重なり部には約4mmの隙間があり、雨水を外へ出すことと、屋根材の裏側の通気を保つ役割があります。

八王子市内の戸建て 塗装前のスレート屋根の重なり部と雪止め金具
塗装前のスレート:上の屋根材の下端が、下の屋根材に重なっている部分(横の線)が重なり部。表面に古い塗膜がまだらに残っている。突起は雪止め金具で、タスペーサーではない(八王子市内の戸建て・8月6日)

塗り替えでこの隙間に塗料が入って固まると、重なり部がふさがります。入り込んだ雨水が抜けにくくなり、毛細管現象で重なりの奥へ吸い上げられて、屋根材の下のルーフィング(防水シート)や野地板の側へ回りやすくなります。この隙間をあらためて確保する作業が「縁切り」で、タスペーサーはそのための部材です。

八王子 図解 スレート屋根の重なり部と縁切り タスペーサーで隙間を確保した断面
図解:縁切りをしないと塗膜が重なりの隙間をふさぎ、雨水が奥へ吸い上げられる。タスペーサーを差し込むと塗装後も隙間が残り、雨水は軒先側へ抜ける(模式図)

タスペーサーの役割を整理すると、次の3つです。

  • 隙間の確保:重なり部に差し込んで、塗装後も屋根材どうしが塗膜でくっつかないようにする
  • 排水と通気:重なり部に入った雨水の出口と、屋根材の裏側の通気を保つ
  • 塗装後の作業を減らす:塗装前に入れておくため、塗り終えた屋根に上って塗膜を切る作業がいらなくなる

タスペーサーの種類|「01」と「02」の違い

セイムの公式サイトで紹介されているタスペーサーは「タスペーサー01」と「タスペーサー02」の2種類です。違いは素材の性能と、差し込むタイミングにあります。

製品メーカーの説明差し込むタイミング(メーカー推奨)
タスペーサー01通気性・緩衝性(クッション性)・耐溶剤性を高めた新しいタイプ。特にノンアスベストの屋根材に勧めている塗装工程の前(下塗りの前)
タスペーサー02通常の屋根補修に使われる、汎用性の高い従来タイプ下塗りの後
出典:セイム(タスペーサー公式サイト)「製品紹介」「タスペーサー工法とは」「屋根塗装工事(塗り替え)の流れ」「よくあるご質問」

どちらも、屋根材と屋根材が重なっている部分に差し込んで使います。セイムは施工店向けのページで、取扱説明書に記載されている施工方法に従って施工するよう求めており、屋根材1枚あたりの本数や細かな位置は、今回確認した一般向けのページには記載がありませんでした。見積書や工程表に「タスペーサー」とだけある場合は、01と02のどちらを使うかを確かめると、挿入のタイミングまで分かります。

タスペーサーが必要な屋根・不要な屋根

タスペーサーは平板スレート屋根の塗り替え専用の部材です。スレート屋根を塗るときは縁切りを考える必要がありますが、すべての屋根でタスペーサーを入れるわけではありません。セイムの公表情報と当社の判断基準をまとめます。

  • 必要になる屋根:平板スレート屋根の塗り替えで、重なり部の隙間が塗膜でふさがるおそれがある場合
  • 不要とされる屋根:屋根材の間にすでに4mm以上の隙間がある場合、縁切りやタスペーサーは不要とセイムは説明している
  • 対象外の屋根:瓦屋根や金属屋根など、平板スレート以外の屋根(タスペーサーは平板スレート屋根専用)
  • 施工店に相談とされる屋根:特殊な形状・勾配の屋根、太陽光発電パネルを載せている屋根(使えるかは条件や場所で変わるとセイムは案内)

もう一つの判断材料が、屋根材そのものの傷み具合です。劣化が進んだスレートに差し込むと割れることがあるため、当社では屋根の状態を見て縁切りの方法を選びます。割れや反りが多く、塗装よりカバー工法や葺き替えが向く屋根もあります。工事の種類の選び方は「八王子市の屋根塗装・屋根工事」のページにまとめています。

手作業の縁切りとの違い|塗装の前に入れるか、後で切るか

縁切りには、塗装を終えてからカッターや皮スキ(へら状の工具)で重なり部の塗膜を切る方法と、塗装の前にタスペーサーを差し込んでおく方法があります。セイムの説明をもとに違いを整理します。

項目手作業の縁切り(カッター・皮スキ)タスペーサー
作業のタイミング塗装の後中塗り・上塗りの前(製品により下塗りの前か後)
道具(メーカーの説明)カッターと皮スキ。カッターは塗膜に刃が入りにくく効率が悪いため、皮スキを差して塗膜をはがす方法が主流差し込むだけ(専用部材)
作業時間(メーカーの説明)一般的な平板スレート屋根で2人がかりで1日30坪(約100㎡)・約1,000個の想定で約2〜3時間(初めての塗り替えの場合)
屋根への負担(メーカーの説明)皮スキに強い力がかかるため屋根材を破損させることがある。塗装後の屋根に上るため足跡や小口の欠けのおそれ正しい位置に差し込むことで、屋根材が割れる要因を減らせる
塗膜の状態(メーカーの説明)塗装の翌日に切ると裏側の塗料が乾いておらず、後日また重なり部がくっつくことがある差し込んだまま塗るため、塗装後も隙間が残る
出典:セイム(タスペーサー公式サイト)「『縁切り』とは」「タスペーサー工法とは」「よくあるご質問」

どちらの方法でも、目的は重なり部の隙間を確保することです。大切なのは、縁切りをするかどうか、するならどの方法で行うかが、工事の前に決まっていて、見積書や工程の説明で確認できることです。

タスペーサーの入れ方|下塗り→挿入→中塗りの順(八王子市内の戸建て)

八王子市内の戸建て(スレート屋根)で当社が行った屋根塗装から、タスペーサーに関わる「下塗り→挿入→中塗り」の3段を写真で追います。日付は写真の撮影記録によるものです。塗料は関西ペイントの製品で、下塗りに「アレスダイナミックシーラーマイルド」、中塗り・上塗りに「アレスダイナミックルーフ」を使いました(見積書の表記は「ダイナミックシーラーマイルド」「ダイナミックルーフ二回塗り」)。

1. 下塗り(2026年8月6日)

スレート面にシーラー(下塗り材)を塗ります。関西ペイントのカタログでは、住宅屋根用化粧スレートの標準仕様は、下塗りがアレスダイナミックシーラーマイルド(透明)で1〜2回(劣化して吸い込みの著しい素材は2回)、上塗りがアレスダイナミックルーフで2回です。

八王子市内の戸建て スレート屋根の下塗り シーラー塗布
下塗り:スレート面にシーラーをローラーで塗っているところ(8月6日)

2. タスペーサーの挿入(8月7日)

下塗りの翌日、スレートの重なり部にタスペーサーを差し込みました。下の1枚目は、下塗りを終えた面に差し込んだ状態です。黒い小さな部材がタスペーサーで、上の屋根材の下端(重なり部)に入っています。

八王子市内の戸建て 下塗り後のスレートの重なり部に差し込んだタスペーサー
タスペーサー挿入:下塗り後のスレートの重なり部に差し込んだ直後。黒い部材がタスペーサー(8月7日)
八王子市内の戸建て スレートの継ぎ目付近に入れたタスペーサー
タスペーサー挿入:別の面の重なり部。どのタスペーサーも屋根材の縦の継ぎ目の近くに入っている(8月7日)

2枚とも、タスペーサーは屋根材の縦の継ぎ目の近くに入っています。セイムは、タスペーサー02は下塗りの後、タスペーサー01は下塗りの前に差し込むことを推奨しています。この記事の現場で使ったのはタスペーサー01で、下塗りの後に差し込み、そのあと中塗りに進んでいます。

3. 中塗り(8月7日)

タスペーサーを差し込んだまま、アレスダイナミックルーフの1回目(中塗り)を面ごとに塗り進めます。重なり部にタスペーサーが入っているので、塗料を塗り重ねても隙間が残ります。8月11日に同じ塗料で2回目(上塗り)を塗って仕上げました。タスペーサーは抜かずに入れたままにする施工で、セイムは上塗り塗料で固定されるため抜け落ちはほとんどないとしています。

八王子市内の戸建て 中塗りを終えた屋根面と中塗り前の屋根面
中塗りの途中:左の面は中塗りを終え、右の面(雪止め金具が並ぶ面)は中塗り前(8月7日)
八王子市内の戸建て 中塗りを終えた面と中塗り前の面が並ぶスレート屋根
中塗りの途中:別の角度。左の面は中塗りの赤、右の面は中塗り前。中央の棟板金は錆止めの黒(8月7日)

写真の棟板金のように錆止めを塗ってから仕上げる手順と、板金を交換したほうがよい場合の見分け方は棟板金の塗装とは|錆止め・下地処理の手順・釘の浮きと交換の判断で解説しています。

高圧洗浄・屋根板金の処理から上塗り・完工までの全工程と、外壁塗装もあわせた工事の流れは「八王子のサイディング外壁・スレート屋根塗装 施工事例」で紹介しています。

数の目安と耐久性|1㎡あたり約10個(メーカー公表)

タスペーサーをいくつ使うかは、屋根の面積でおおよそ決まります。セイムが公表している目安と、耐久性に関する情報は次のとおりです。

項目セイムの公表内容
使用量の目安屋根1㎡あたり約10個。30坪(約100㎡)で約1,000個(製品ページの試算では1棟700〜800個・2020年7月時点)
作業時間の目安30坪・約1,000個の想定で、初めての塗り替えの場合は約2〜3時間(作業者や屋根の状況で異なる)
原料の耐久年数約15年(使用環境によって異なる)
風への強さ建材試験センターの実験で、風速50mでも飛散しないことを確認
塗装後の扱い入れたままにする。上塗り塗料で固定されるため、抜け落ちはほとんどない
出典:セイム(タスペーサー公式サイト)「『タスペーサー』についてのご質問」「製品紹介(タスペーサー)」

タスペーサーは塗膜と一緒に屋根に残る部材なので、寿命は次の塗り替えまでの期間とあわせて考えます。屋根の点検では、次のような点を見ます。

  • 重なり部の隙間が残っているか(塗膜で屋根材どうしがくっついていないか)
  • 重なり部の近くに、割れや欠けが出ていないか
  • 屋根材の反りや浮きで、隙間が広がりすぎていないか(セイムは、反りや浮きで隙間が広がると吹き返しの雨が入りやすくなると説明)

費用の決まり方|見積書でタスペーサーはどう書かれるか

上の現場で当社が出した見積書では、屋根塗装工事の中に「タスペーサー」という行があり、単位は㎡、数量は屋根の塗装面積(高圧洗浄・下塗りの行と同じ数量)でした。セイムの案内と当社の見積書をもとに整理すると、見積書での書かれ方は次の3通りに分けられます。

  1. 「タスペーサー」の行がある:屋根面積(㎡)で計上するか、「一式」で計上する
  2. 「縁切り」の行だけがある:タスペーサーを使うのか、塗装後に手作業で切るのかが書かれていない
  3. どちらの行もない:縁切りをしないのか、別の項目に含めているのかが読み取れない

セイムも、見積書に「縁切り」だけがある場合は方法を、どちらの記載もない場合は縁切りをするかどうかを施工店に確かめるよう案内しています。縁切りが不要な屋根もあるため、行がないこと自体が問題とは限りません。比べるときは、次の点を確認します。

  • 縁切りの方法(タスペーサーか、塗装後の手作業か)
  • タスペーサーの場合は製品名(01か02か)と、差し込むタイミング
  • 数量の単位(㎡か一式か)と、屋根の塗装面積と合っているか
  • 縁切りが不要と判断した場合は、その理由

屋根塗装の金額全体を左右するのは、屋根の面積、下地補修や板金の処理の量、塗料のグレード、足場です。タスペーサーはその中の一項目です。

よくある失敗と注意点|入れ忘れ・入れる時期・屋根材の状態

タスペーサーは小さな部材ですが、効果は「いつ・どこに・どの屋根に入れるか」で決まります。メーカーの説明をもとに、確認しておきたい点を整理します。

  • 縁切りの方法が決まっていない:見積書や工程表で、縁切りをするか・どの方法か・タスペーサーなら01か02か(差し込むタイミングが変わる)を確認できる状態にしておく
  • 差し込む位置:セイムは、正しい位置に差し込むことで屋根材が割れる要因を減らせるとしている。施工店には取扱説明書の施工方法に従うよう求めている
  • 傷んだスレートへの差し込み:劣化が進んだ屋根材は割れやすいため、状態を見て方法を選ぶ
  • 手作業の縁切りを塗装の翌日に行う:裏側の塗料が乾いておらず、後日また重なり部がくっつくことがあるとセイムは説明している

どれも塗装が終わると外から確かめにくい点です。この記事の現場では工程ごとに施工写真を記録しました。工事を頼むときは、タスペーサーを差し込んだ状態の写真が残るかを確認しておくと安心です。

タスペーサーのよくある質問

Q. タスペーサーは塗装後も入れたままで大丈夫ですか?

入れたままにする施工です。セイムは、上塗り塗料で固定されるため抜け落ちはほとんどなく、建材試験センターの実験で風速50mでも飛散しないことを確認したとしています。原料の耐久年数は約15年(使用環境によって異なる)と公表されています。

Q. 1㎡あたり何個使いますか?

セイムの目安は、屋根1㎡あたり約10個、30坪(約100㎡)の屋根で約1,000個です。実際の数は屋根の形や屋根材の割り付けで変わります。

Q. タスペーサー01と02は、どちらが良いのですか?

01は通気性・緩衝性・耐溶剤性を高めた新しいタイプで、セイムは特にノンアスベストの屋根材に勧めています。02は汎用性の高い従来タイプです。メーカーが推奨する差し込むタイミングも異なるため(上の「種類」の表を参照)、見積書や工程の説明で、どちらをいつ入れるかを確認してください。

Q. 縁切りやタスペーサーが要らない屋根はありますか?

あります。セイムは、屋根材の間に4mm以上の隙間がある場合は縁切りもタスペーサーも不要としています。また、タスペーサーは平板スレート屋根専用の部材なので、瓦屋根や金属屋根には使いません。

Q. 塗装後にカッターで縁切りする方法と、どう違いますか?

どちらも重なり部の隙間を確保するための作業で、違いはタイミングと手間です。セイムの説明では、手作業の縁切りは一般的な屋根で2人がかりで1日、タスペーサーは30坪で約2〜3時間です。手作業の場合は、塗料が乾いてから切ることと、屋根材を割らないことが大切になります。

Q. 雨漏りしている屋根も、タスペーサーを入れて塗れば直りますか?

タスペーサーは、塗装で重なりの隙間をふさがないための部材で、雨漏りを直す部材ではありません。雨漏りしている場合は、原因の場所を調べて修理してから塗装を考えます。順番の考え方は、冒頭で紹介した「屋根塗装で雨漏りは直る?」の記事で解説しています。

巧正のスレート屋根塗装への対応

巧正株式会社は、八王子市を拠点に外壁塗装・屋根塗装・防水工事などの建物修繕を行う会社です。元請け一貫体制で、現地調査・見積・工程管理・完工後の点検までを当社が担当し、塗装工事は協力職人と組んで施工します。

  • スレート屋根の塗装では、タスペーサーの挿入を標準の工程にしています(屋根の状態により方法を選びます)
  • この記事の現場では、見積書に「タスペーサー」の行と、使う塗料のメーカー名・製品名を記載しました
  • 劣化が進んだ屋根は、塗装だけでなくカバー工法・葺き替えも含めてご説明します
  • この記事の現場では、工程ごとに施工写真を記録しました

東京都知事許可(般-7)第161006号。創業2014年4月、2023年10月に法人化し、累計1,000件超の工事を手がけてきました。スレート屋根の塗り替えの時期や、見積書の縁切りの書き方で迷っている段階でもご相談ください。

屋根塗装のご相談・現地調査のご依頼

お電話:042-508-3134(9:00〜18:00/日曜定休)

お問い合わせフォーム

LINEで相談する

執筆・監修:巧正株式会社(外壁診断士・2級建築施工管理技士補 在籍)

出典・参考資料

巧正株式会社

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次