手すり支柱の根元からの雨漏り|原因と止水注入(グラウト)の手順・費用
屋上やバルコニーの手すりの支柱には、中が空洞(中空)の金属製のものがあります。支柱の中に入った雨水が根元にたまり、台座や床の防水層の下を伝って、下階の雨漏りにつながることがあります。床の防水に目立つ傷みがないのに雨漏りが続くとき、確かめたい部位の一つです。
この記事では、手すり支柱の根元という部位に絞り、水がたまる仕組み、劣化サインと確かめ方、対処の選択肢、支柱の中に樹脂モルタルを注入して止水する「止水注入」の手順、見積書での書かれ方を、メーカー(コニシ)の公表資料と、八王子市内のビル屋上で当社が行った部分補修の写真で解説します。雨漏りの原因を部位ごとに見分ける方法は「雨漏りの原因はどこ?部位別の見分け方」の記事で扱っています。その記事の「笠木と手すり壁」は、パラペット(壁)とその上に載る笠木の話で、この記事の「手すり支柱」は床や台座から立つ縦の部材です。
先に結論をまとめます。
- 中空の手すり支柱は、すき間から入った雨水が中にたまり、根元から台座や床の下へ回ることがあります。床の防水だけを直しても止まらない雨漏りの入口になりうる部位です
- 支柱の中の水は外から見えません。床の防水を切開したときの水の回り方や、根元に小さな穴をあけて、中の水の有無を確かめることがあります(コニシの補修手順も根元への穴あけから始まります)
- 対処は、根元のシーリング・防水の立上げ・止水注入・支柱の交換の4つに分かれます。止水注入は、支柱を外さずに下部を樹脂モルタルで満たし、水がたまる場所をなくす方法です
- 止水注入が何年もつかは、メーカーの公表値が見当たりません。注入後も根元と防水層をあわせて点検します
- 止水注入は床の防水の改修とあわせて行うと入口を一度に手当てできますが、水の入口が支柱だけなら単独でも行えます
- 費用は注入する支柱の本数が基本です。見積書では、何本に穴をあけて確かめるか、ほかの支柱で水が見つかったときの扱いを確認します
手すり(手摺)支柱の根元からの雨漏りとは|中空の支柱に水がたまる仕組み
屋上の手すりは、支柱をコンクリートの台座(基礎)に立てたり、床やパラペット(屋上の外周の立上り壁)に埋め込んだりして固定します。記事で使う呼び方は次のとおりです。
- 支柱:手すりを支える縦の部材。中が空洞の角形・丸形の金属管のものがある
- 根元(足元):支柱が台座や床に入る部分。メーカーの資料では「手すり足元部」と呼ばれる
- 台座(基礎):支柱を立てるために床の上に設けたコンクリートの台。表面を防水層や塗膜で覆う
- 穿孔(せんこう):ドリルで穴をあけること。この記事では支柱の根元に穴をあける作業を指す
屋上の金網フェンスや防球ネットの支柱も、中空の金属管で台座に立つものは同じつくりで、同じ経路で水がたまることがあります。この記事の現場は金網フェンスの支柱です(見積書では「手摺支柱」)。
支柱が中空の場合、手すりとの接合部やビス穴などのすき間から入った雨水は、中を伝って根元まで落ちると考えられます。根元に出口がなければ、水はそこにたまります。たまった水が支柱と台座のすき間や台座の内部を通り、台座と床の取り合いや床の防水層の下へ回ると、下階の天井や壁に雨じみとして出ることがあります。

どこから入り、どこを通るかは、建物ごとの手すりの納まりで変わります。ただ、支柱の中にたまった水そのものは、手すり足元の補修工法の前提になっています。コニシは、自社の補修工法の手順の中で、支柱内部に滞留している水を充てん材に置き換えて排出することを示しています。
劣化サインと確かめ方|外に出る変化と、穴をあけて見る方法
支柱の中は外から見えないため、点検は外に出る変化から始めます。手すりの根元まわりでは、次のような変化がないかを見ます。
- 支柱の根元や台座の表面に広がる、茶色い錆色のしみ
- 台座まわりの防水層の浮き・膨れ・切れ
- 支柱と台座のすき間をふさいだシーリングの切れ・やせ
- 支柱を手で押したときのぐらつき
- 下階の天井や壁の雨じみが、手すりに近い位置に出ていないか
外から見て判断がつかないときは、床の防水を切開したときの水の回り方や、根元に小さな穴をあけて、中の水の有無を確かめることがあります。この記事の現場では、床の切開で台座に接する範囲まで下の層に水が回った跡があることを確認し、その支柱を注入の対象にしました(下の「止水注入の流れ」の2枚目の写真)。見積書の「切開時に漏水が確認された支柱」は、こうして切開の段階で水の回りが確かめられた支柱を指します。床の防水層そのものの劣化サインは「屋上防水の劣化サイン7つ」でまとめています。
対処の選択肢|根元のシーリング・防水の立上げ・止水注入・支柱の交換
根元からの雨漏りへの対処は、水の入口をふさぐか、水がたまる場所をなくすか、支柱そのものを替えるかで分かれます。4つの方法を比べます。
| 対処 | 何をするか | 向く状態 | 確かめたい点 |
|---|---|---|---|
| 根元のシーリング | 支柱と台座・床のすき間をシーリング材でふさぐ | すき間からの浸入が主で、支柱の中に水がたまっていない | 支柱の中にたまった水は抜けない。上部から入る水は止まらない |
| 防水層の立上げ処理 | 床の防水を台座や支柱の根元まで立ち上げて納める | 床の防水の改修と同時に行う | 支柱の中にたまった水は残る |
| 止水注入(グラウト注入) | 根元に穴をあけ、支柱の下部を樹脂モルタルで満たす | 支柱の中に水がたまっていて、支柱は使い続けられる | 注入する本数と、注入後の穴の扱い |
| 支柱の交換・補強 | 腐食した支柱を取り替える、または補強する | 錆や腐食が進み、ぐらつきなど強度に不安がある | 手すり全体の工事になり、台座のはつりなどが伴うことがある |
どれか一つで済むとは限らず、床の防水の改修とあわせて組み合わせることもあります。この記事の現場では、屋上の床の防水の部分補修と、支柱の止水注入を同じ工事の中で行いました。
止水注入(TS-RMグラウト工法)とは|コニシの手すり足元の補修工法
TS-RMグラウト工法は、接着剤「ボンド」のメーカーであるコニシ株式会社の、手すり足元部を補修するための注入工法です。コニシは、従来のエポキシ樹脂モルタルの流動性を改善した高流動のエポキシ樹脂モルタルを注入し、安定した充てん接着性能を発揮する工法と説明しています。「グラウト」は、すき間に流し込んで満たす材料のことです。
| 工程 | コニシの公表手順 |
|---|---|
| 1. 支柱への穴あけ | ドリルで支柱に穴をあける |
| 2. 充てん材の準備 | 樹脂の主剤と硬化剤を正確に計量して十分に練り混ぜ、骨材を加えて混ぜる |
| 3. 注入(1回目) | 注入器具に外径Φ8mm程度の曲がるチューブを付け、先端を支柱内部の底に入れて底部から充てんする。支柱内にたまっていた水が充てん材に置き換わり、注入口のまわりから出ることを確認する |
| 4. 注入(2回目) | 充てん材が目減りした分を継ぎ足し、注入穴の下端まで注入する |
| 5. 穴の処理 | 穴の小口を防錆処理し、開けたままにする。気圧差による水の吸い込みを防ぎ、支柱内の乾燥を保ち、排水口として使う |

コニシの手順には、たまった水を先に抜く工程がありません。底から入れた充てん材が水を押し出しながら支柱の下部を満たしていく流れです。使う材料と施工条件は次のとおりです。
| 項目 | メーカーの公表内容 |
|---|---|
| 充てん材(樹脂) | ボンド E2300J(エポキシ樹脂。主剤:硬化剤=2:1) |
| 充てん材(骨材) | RM骨材 |
| 標準配合比 | E2300J:RM骨材=1:1 |
| E2300Jの特長 | 湿潤面や水中でも施工できる、土木建築用の低粘度型エポキシ樹脂 |
| 施工環境と養生(E2300J) | 原則として5℃以上で施工(低温では硬化が著しく遅くなる)。施工後24時間以上養生する |
止水注入が向くのは、支柱の中に水がたまっていて、支柱そのものはまだ使える場合です。支柱の根元が腐食して穴があいている場合や、床の防水層そのものが切れていて水の入口が別にある場合は、注入だけでは止まりません。また、支柱を台座に埋め込む納まりか、底板(ベースプレート)をアンカーで台座や床に留める納まりかで、水の通り道も変わると考えられます。
止水注入の流れ|八王子市内のビル屋上の部分補修
八王子市内のビル屋上で、2026年9〜10月に当社が行った部分補修の記録です。床に膨れがあり、下階に時々雨漏りが出ていた建物で、事前の説明資料では、床の防水層の下への水の回り込みに加えて、手すり支柱の根元からの浸水も原因の一つになっている可能性を挙げていました。日付と時刻は写真の撮影記録によるものです。
1. 着工時の根元と、床の防水の切開(2026年9月24日)
この現場の支柱は金網フェンスの支柱(見積書上の手摺支柱)で、表面を防水層(または塗膜)で覆ったコンクリートの台座の上に立っています。同じ日に、膨れと水回りのある範囲の床の防水を切開して撤去しました。


2. 支柱の根元に穴をあける(9月24日)
見積書では止水注入を1本計上し、ほかの支柱で漏水が見つかった場合は別途お見積りとしていました(書き方は下の「費用の決まり方」で紹介します)。床の防水を切開した日に、支柱の根元にドリルで穴をあけ、穴からは中にたまっていた水が出ました。


3. 充てん材の注入(10月15日)
床の防水工事を進めたあと、トップコートを塗ったのと同じ10月15日に止水注入を行いました。台座を緑のテープと紙で養生してから、根元の穴に注入器具のノズルを当てて充てん材を入れています。写真は1本の支柱の注入を記録したものです。


穴のまわりから出てきた材料は、下に敷いた紙で受けています。
4. 床の防水の補修と完工(10月15日)
床の防水は、切開した範囲を通気緩衝工法でやり直しました。シートの継ぎ目・端部の処理では、手すり支柱の根元まわりも先に処理しています。床の防水の工程は「通気緩衝シートとは」の記事で、同じ現場の写真で紹介しています。

寿命と点検|注入した後に見るところ
今回確認したコニシの公開資料(工法のページ・ガイドブック・E2300Jのカタログ)には、TS-RMグラウト工法の耐用年数の記載はありませんでした。注入で満たされるのは支柱の下部で、支柱の上部や手すりとの接合部から水が入る経路はそのまま残ります。注入後も、根元と防水層をあわせて見ていきます。
- 注入口の穴が開いていて、詰まっていないか(メーカー手順どおり排水口として残した場合)
- 根元や台座に、新しい錆色のしみが出ていないか
- 台座まわりの防水層に、浮きや切れがないか
- 支柱にぐらつきが出ていないか
- 下階の雨じみが、再び出ていないか
費用の決まり方|見積書で止水注入はどう書かれるか
止水注入の費用は、注入する支柱の本数が基本の単位です。上の現場で当社が出した見積書では、「手摺支柱 止水注入(TS-RMグラウト工法)」の行があり、単位は「本」、摘要は「切開時に漏水が確認された支柱を穿孔しTS-RMグラウト注入・止水」でした。備考には、ほかの支柱で漏水が見つかった場合は別途お見積りとなることを書いています。金額を左右するのは次の点です。
- 注入する本数:中に水がたまっていた支柱の数
- 確かめる範囲:何本の支柱に穴をあけて中を確かめるか
- 床の防水工事と同時か:台座まわりの防水の補修も必要か
- 支柱の傷み:注入で済むか、交換や補強まで要るか
- 足場の要否:この現場は屋上の床から作業でき、見積書に足場の行はありません
見積書を比べるときは、次の点が書かれているかを見ると、内容の違いが分かります。
- 工法名や材料名(どのメーカーのどの工法か)
- 本数と単位(「本」か「一式」か)
- 注入した後の穴の扱い(開けたままにするか、ふさぐか)
- ほかの支柱で水が見つかったときの扱い(追加の見積りになるか)
床の防水との関係|防水をやり直しても止まらない雨漏り
屋上の雨漏りは、床の防水層の劣化だけでなく、防水層の端末・ドレン・笠木・手すり支柱の根元など、防水層が途切れたり貫かれたりする場所から入ることがあります。支柱の中に水がたまっている場合、床の防水をやり直しても、支柱の根元から台座の内部へ回る水は残ります。逆に、水の入口が支柱だけなら、止水注入のみで対処することもあります。
反対に、支柱の止水だけでは床の防水の劣化は直りません。この記事の現場のように、床の防水の補修と支柱の止水を同じ工事で行うと、二つの入口を一度に手当てできます。ウレタン防水の工法の選び方や費用の考え方は「ウレタン防水とは」で解説しています。
よくある失敗と注意点|中の水を確かめる前に決めない
手すり支柱の根元は、工事を終えると中の状態が見えなくなる部位です。メーカーの説明をもとに、確かめておきたい点を整理します。
- 床の防水だけを直して様子を見る:支柱の中の水は残る。雨漏りが続くときは、支柱の根元も確かめる
- 根元をシーリングでふさぐだけにする:中に水がたまっている場合は出口がなくなる。先に中の水の有無を確かめる
- 注入後の穴をふさぐ:コニシの手順では、穴は防錆処理して開けたままにし、支柱内の乾燥を保つ排水口として使う
- 低温の日に注入する:E2300Jは原則5℃以上で施工し、施工後24時間以上養生する。低温では硬化が著しく遅くなる
- 錆が進んだ支柱を注入だけで済ませる:ぐらつきや腐食が進んでいる場合は、交換や補強も含めて判断する
この記事の現場では、穴あけと注入の工程を写真で記録しました。工事を頼むときは、穴をあけた支柱と注入した支柱が写真で分かるかを確認しておくと安心です。
手すり支柱の雨漏りと止水注入のよくある質問
Q. 手すりの支柱に穴をあけても大丈夫ですか?
TS-RMグラウト工法は、支柱に穴をあけてから注入する工法です。コニシの手順では、注入後の穴は小口を防錆処理して開けたままにし、気圧差による水の吸い込みを防ぎ、支柱内の乾燥を保つ排水口として使うとされています。この記事の現場でも、注入後の穴は開けたままにしています。穴の位置は、支柱の形と傷み具合を見て決めます。
Q. 支柱の中の水を抜いてから注入するのですか?
コニシの手順では、チューブの先を支柱の底に入れて底部から充てんし、たまっていた水が充てん材に置き換わって注入口のまわりから出ることを確かめます。注入材のE2300Jは、湿潤面や水中でも施工できるエポキシ樹脂とされています。
Q. 止水注入はどのくらいもちますか?
年数の目安はメーカーから公表されていません(上の「寿命と点検」を参照)。注入で満たすのは支柱の下部なので、注入後も根元のしみ、台座まわりの防水層、下階の雨じみを点検で確かめていきます。
Q. すべての支柱に注入が必要ですか?
対象は、中に水がたまっている支柱です。この記事の現場では、見積書で1本を計上し、ほかの支柱で漏水が見つかった場合は別途お見積りとしました。実際には切開の段階でほかの支柱にも水の回りが見つかり、注入は3本に行いました。何本に穴をあけて確かめるかは、雨漏りの位置や台座の状態を見て決めます。
Q. 床の防水をやり直せば、支柱からの雨漏りも止まりますか?
支柱の中に水がたまっている場合は、床の防水だけでは止まらないことがあります。雨漏りの入口が床か支柱か、ほかの部位かを見分けてから工事の範囲を決めます。部位ごとの見分け方は、冒頭で紹介した雨漏りの原因の記事で解説しています。
Q. 冬や雨の日でも工事できますか?
注入材のE2300Jは、原則として5℃以上で施工し、施工後24時間以上養生するとカタログに示されています(低温では硬化が著しく遅くなります)。屋上での作業のため、気温や天候を見て日程を決めます。
巧正の手すり支柱・屋上防水への対応
巧正株式会社は、八王子市を拠点に屋上防水・外壁塗装などの建物修繕を行う会社です。元請け一貫体制で、現地調査・見積・工程管理・完工後の点検までを当社が担当し、防水工事は協力職人と組んで施工します。
- この記事の現場では、床の防水に加えて手すり支柱の根元を確かめ、見積書に工法名と本数、ほかの支柱で漏水が見つかったときの扱いを記載しました
- 保証:屋上防水(全面改修)は平場10年・立上り5年。部分補修や止水注入の保証の有無は見積時にお伝えします
- 建物診断・現地調査・見積は無料です(巧正の無料建物診断)
東京都知事許可(般-7)第161006号。創業2014年4月、2023年10月に法人化し、累計1,000件超の工事を手がけてきました。手すりまわりの錆やしみ、原因の分からない雨漏りで迷っている段階でもご相談ください。
屋上の雨漏り・手すり支柱のご相談・現地調査のご依頼
執筆・監修:巧正株式会社(外壁診断士・2級建築施工管理技士補 在籍)
出典・参考資料
- コニシ株式会社「TS-RMグラウト 工法」(ボンド商品情報) https://www.bond.co.jp/bond/arch/exterior/flow12.html
- コニシ株式会社「ボンド E2300J」カタログ https://www.bond.co.jp/bond/catalog/search/pdf/download/154
- コニシ「外壁リハビリシステム」ガイドブック(2014年1月版・販売店掲載のPDF。手すり根元の改修工法・TS-RMグラウト工法用材料・使用材料の取り扱いの各節) https://ohigroup.jp/img/item/konishi.pdf
