シラン系吸水防止材とは|撥水材との違い・施工手順・塗膜防水との使い分け
外壁タイルや打放しコンクリートの建物で「塗りつぶさずに水を防ぎたい」と考えたとき、選択肢になるのが吸水防止材です。撥水材、シラン系撥水剤、表面含浸材など呼び方が複数あり、透明塗膜防水との違いも分かりにくい材料です。この記事では、吸水防止材の仕組みと施工手順、向く下地・向かない下地、そして透明塗膜防水との使い分けを、八王子で元請けとして修繕を請け負う立場から整理します。
先に結論
吸水防止材(シラン系・シラン/シロキサン系)は、素地の内部に染み込んで空隙の内壁を撥水性に変える「含浸系」の材料です。表面に膜を作らないため、見た目がほとんど変わらず、素地の通気性も保たれます。ただしひび割れをふさぐ力はないため、劣化が進んだ壁には向きません。ひび割れが多い面や浸水を面で止めたい場合は、膜を作る透明塗膜防水が適します。所要量の目安は0.3〜0.5L/㎡(メーカー公表値)です。
執筆:巧正株式会社 施工管理部(東京都八王子市/東京都知事許可(般-7)第161006号)。材料の仕様・所要量は各メーカーの公表資料を、施工上の判断は当社の実務をもとにしています。
吸水防止材とは|膜を作らずに水をはじく材料
吸水防止材は、コンクリートやモルタル、タイルの表面から内部に浸透し、素地そのものを撥水性に変える材料です。主成分にはシランやシロキサンといったケイ素系の化合物が使われ、表面含浸材、撥水材、シラン系撥水剤などとも呼ばれます。呼び方は違っても「膜を作らずに素地の中で効かせる」という考え方は共通です。

呼び方の違い(撥水材・表面含浸材・吸水防止材)
現場やカタログでは次のように使い分けられますが、実務上はほぼ同じものを指しています。撥水材は「水をはじく」という機能に着目した呼び方、吸水防止材は「水を吸わせない」という目的に着目した呼び方、表面含浸材は土木分野で使われる用語です。なお表面含浸材には、撥水型(シラン系)のほかに、素地を緻密化させるけい酸塩系もあり、こちらは撥水ではなく組織を詰める考え方の材料です。
水をはじく仕組み
コンクリートやモルタルには、目に見えない無数の空隙があります。この空隙が毛細管現象で水を吸い上げるため、雨がかかると素地が水を含みます。

吸水防止材を塗ると、この空隙の内壁に撥水層が形成されます。空隙そのものは塞がないため、素地の内部にある水蒸気は外へ抜けられます。これが「水は入れないが、湿気は通す」という含浸系の特徴です。膜で覆う塗料と違い、剥がれるという劣化の仕方をしないのも構造上の利点です。
含浸系・塗膜系・塗りつぶし塗装の使い分け

ここで押さえておきたいのが、吸水防止材はひび割れをふさげないという点です。染み込ませる材料なので、幅のあるひび割れや、目地が痩せて水みちができている箇所には効きません。逆に言えば、素地の状態が健全で「これ以上水を吸わせたくない」段階の予防措置として最も力を発揮します。
施工手順|塗るより「乾かす」に時間を使う

工程そのものはシンプルですが、性能を左右するのは下地の乾燥です。素地が水を含んだ状態では材料が染み込まず、期待した撥水性能が出ません。降雨の直後や、結露が残る時期は工程を待つ判断が必要になります。
所要量はメーカーによって異なりますが、菊水化学工業「シランコートL」の場合、標準的な下地で0.3〜0.4L/㎡、多孔質な下地で0.4〜0.5L/㎡が目安として公表されています(設計価格1,800円/㎡)。多孔質な素地ほど吸い込む量が増えるため、面積だけで材料費を見積もると不足する点は実務上の注意点です。
🔍 施工管理部の所見|洗浄とセットで計上した実例
2026年7月にご依頼いただいた神奈川県内の事業所建物の改修工事では、タイル壁の洗浄と吸水防止材を1つの項目としてまとめ、25㎡で35,000円(㎡あたり1,400円)で計上しました。洗浄と吸水防止材をセットにしているのには理由があります。素地に汚れや白華が残ったまま吸水防止材を塗っても、汚れの層に染み込むだけで素地まで届かないためです。
実務では「洗って、乾かして、染み込ませる」が一続きの工程になります。見積書で吸水防止材の項目だけが単独で載っていて洗浄の記載がない場合は、既存の洗浄工程に含まれているのか、それとも省かれているのかを確認したほうが確実です。
向く下地・向かない下地

とくに注意したいのが塗膜が残っている面です。過去に塗装された壁は、塗膜が浸透を妨げるため吸水防止材が効きません。また、すでに雨漏りが起きている箇所を吸水防止材で止めることはできません。この場合は原因調査と補修、そして膜を作る防水が必要になります。
タイル面の保護は何を選ぶか

判断の分かれ目はひび割れと浮きの量です。劣化が軽微で意匠を残したいなら含浸系の吸水防止材。ひび割れが目立ち、浸水経路を面でふさぎたいなら補修のうえで透明塗膜防水(セブンS)。いずれの場合も、先に打診調査で浮きを把握し、タイル張替・目地補修・薬品洗浄を済ませてから保護層に入るのが基本の流れです。
耐用年数とメンテナンス
含浸系の吸水防止材は、膜がないため「剥がれる」という劣化の仕方をしません。代わりに、撥水性能が徐々に低下していきます。壁面に水をかけたときに水が玉にならず、素地に染み込むようになったら再塗布のタイミングです。日射や雨の当たり方で差が出るため、面ごとに状態を確認します。
大規模修繕の周期(一般に12年前後)で建物全体を点検する際に、あわせて撥水状態を確認しておくと計画が立てやすくなります。
よくある質問
Q. 見た目は変わりませんか?
A. 無色透明の材料なので、素材感はほとんど変わりません。ただし濡れ色(少し濃く見える状態)が出る製品もあるため、目立たない面での試験施工で確認します。
Q. 雨漏りを止められますか?
A. できません。吸水防止材は素地が水を吸うのを抑える材料で、ひび割れや目地の隙間から入る水を止める力はありません。雨漏りには原因調査と補修が必要です。
Q. 透明塗膜防水とどちらが長持ちしますか?
A. 単純な優劣ではなく、下地の状態によります。素地が健全なら含浸系で十分な場合が多く、ひび割れが進んでいるなら塗膜系のほうが確実です。
Q. 塗装済みの壁にも使えますか?
A. 塗膜が残っている面では染み込まないため効果が出ません。既存塗膜の除去が必要になるか、別の工法を検討します。
まとめ|「予防」の材料として位置づける
吸水防止材は、素地が健全なうちに水の吸い込みを抑える予防の材料です。膜を作らないので意匠も通気性も保てる一方、すでに水みちができている壁を救う材料ではありません。ひび割れの量と浮きの有無を現地で確認したうえで、含浸系か塗膜系かを選び分けることが、費用対効果を最大にする判断になります。
巧正株式会社は八王子を拠点に、管理組合の大規模修繕やオーナー様の建物修繕を元請け一貫体制で承っています。タイル面・コンクリート面の現地調査とお見積りは無料です。相見積もり・セカンドオピニオンも歓迎します(TEL 042-508-3134/9:00〜18:00・日曜定休)。
